臨海部の大規模事業:必要性の根拠も失い、経済効果も出ていない
10月3日、日本共産党は決算審査の総括質疑で「臨海部の大規模事業」について質疑を行いましたので紹介します。
●質問
臨海部の大規模事業についてです。
東扇島の大規模事業についてですが、臨港道路東扇島水江町線に12億円、東扇島コンテナターミナル関連事業に6億円、東扇島堀込部埋立など土地造成事業に2.6億円の決算額となっています。これらの事業は、当初、2020年代にコンテナ取扱量が40万TEUとなるからという理由ですすめられてきましたが、現在の取扱量はわずか9万TEUです。事業を進める主な根拠が破綻しています。それにもかかわらず事業は進められており、その事業費も膨大です。臨港道路1950億円、コンテナターミナル376億円、土地造成事業に240億円で総額2566億円にもなります。必要性の主要な根拠が失われた事業について、これ以上、税金を投入すべきではないと思いますが、市長に伺います。
キングスカイフロント関連事業についても同様の事が言えます。川崎市はこの事業について、先端産業の企業を誘致して中小企業などの仕事にもつながるとして経済波及効果を2481億円、誘発就業者数10164人、税収増120億円と見込んでいました。さらに市は企業を誘致するために羽田連絡道路を作り、企業のために土地を購入するなどして市の税金を180億円投入しました。しかし、分科会で明らかにしたように、この10年間で川崎区の製造業の事業所数、従業員数、法人市民税の課税額はどれも増えていないということが明らかになりました。当初の経済波及効果と比べて、思うような経済効果は出ていないと思いますが、市長に伺います。
市は、新たにJFEが撤退した扇島の土地利用転換事業を進めており、扇島とのアクセス道路、港湾施設などに市の税金を2050億円も投入する計画です。特に液化水素サプライチェーンを構築する水素拠点については、予定していたオーストラリアからの水素輸入が中止となり、その他の地域、国内、海外からの水素調達も目途が立っていないこと、発電コストも火力発電の2倍にもなり、CCSなど技術的課題も多数あり必要性、実現性も極めて乏しいのが現実です。東扇島やキングスカイフロントに二の舞になりかねません。早急に液化水素サプライチェーンの事業は見直すことが必要だと思いますが、市長に伺います。
東扇島における取組につきましては、川崎臨海部の優れたポテンシャルを生かし、物游幟能の強化や大規模な土地利用転換への的確な対応などにより私たちの日々の生活や首都圏の産業活動を支える取組として進めているものであり、川崎港が全国に5港ある国際戦略港湾の1つとして、役割を担っていくためにも重要なものであると考えております。
キングスカイフロントについての御質問でございますが、世界最高水準の研究開発から新産業を創出するオープンイノベーション拠点として、ライフサイエンス分野を中心に80の研究機関や企業等が集積しており、平23年に最初の研究機関が運営を開始して以降、集積に
よる効果と、それを活かした人的ネットワークの構築や、共同研究等が活発に行われるエリアを形成しております。
さらに、令和4年の多摩川スカイブリッジの開通を実現し、羽田空港を通じて世界につながる国際的な研究開発拠点として、発展しているととろでございます。
こうした中、キングスカイフロントに立地する法人に対する課税額につきましては、平成23年度と比較して、令和6年度には約5.4倍まで増加して船り、就業者数についても、本市の調査では約5,200人となり、拠点形成の効果が明確に現れております。
今後も、健康・医療等の課勵¥決の貢献とともに、世界最先端のライフサイエンス分野の研究開発拠点として、市内の産業振興のみならず、日本の成長戦略をけん引する取組を進めてまいります。
液化水素サプライチェーンについての御質問でございますが、首都圏へのエネルギー供給拠点である川崎臨海部が、カーボンニュートラル社会においても持続的に発展していくためには、水素を軸とした力ーボンニュートラルなエネルギーの供給拠点へと変革していく必要があると考えております。
こうした中、液化水素サプライチェーンの構築に向けて、関係事業者が、扇島において液化水素基地の建設を進めているととろでございます。
また、先月、関係事業者と豪州のエネルギー最大手企業とが、日豪間における液イヒフk素サプライチェーン構築に向けた協業に関する覚書を締結した旨のプレスリリースがあり、西オーストラリア州を扇島への出荷イ侯補地として協議を進めると伺っています。
本市といたしましては、関係事業者や国等と一層緊に連携し、水素の受入才し・供給拠点の形成や、水素サプライチェーンの構築を着実に進め、川崎臨海部の産業の活性化につなげてまいります。
●再質問
キングスカイフロントの経済波及効果について、このエリアでは「2011年度と比べて課税額は5.4倍、従業者数も5200人になった」という答弁でした。しかし、その頃ここはいすゞ自動車が撤退した跡地であり企業がほとんどなかったところです。そこに企業がきて課税額、従業者が増えるのは当たり前です。このエリアに企業がきても川崎区全体としては製造業の事業所数、従業員数、法人市民税の課税額のどれも増えていないということは、川崎区への経済波及効果はほとんどないということです。
キングスカイフロントも扇島にしても大企業が撤退した跡地に、企業を誘致するために市が多額の税金を投入してすすめている事業です。大企業が撤退することで多くの雇用と中小企業の仕事が奪われ、市の税収にも大きな影響が出るのに、市長は大企業の撤退について物を言わず、それどころか、むしろそれを支援する姿勢を取り続けています。市長は市民の暮らし・雇用よりも大企業の利益を優先する立場なのか、伺います。
◎答弁
これまで、私は、将来を見据えた投資により、本市の強みである産業・経済・利便性の高いまちづくり等を強化し、まちを一層「成長」させる取組を積極的に進めてまいりました。
こうした産業・経済・まちづくり等の活性化による「成長」は、市税収入の増加をはじめとして、本市財政にも好影響を与え、市民生活の向上を通じてまちの「成熟」につながるとともに、「成熟」した市民の力は、更なる「成長」を促すなど、好循環を生み出すものと吉えております。
今後も大規模土地利用転換の実現等による川崎臨海部の産業の活性化や、市内中小企業の振興などをしっかりと進め、「安心のふるさとづくり」と「力強い産業都市づくり」の調和による、持続可能な「最幸のまちかわさき」の実現を目指し、誰もが暮らしやすく住み続けたいまちとなるよう、着実に取り組んでまいります。



