臨海部に新火力発電所ー脱炭素に逆行
むねた議員の25年6月議会での一般質問「臨海部の脱炭素戦略」の質疑を紹介します。
臨海部の脱炭素戦略についてです。
・世界の地球温暖化の状況についてですが、2024年は1850年まで遡る記録の中で最も暖かい年であり、世界の平均気温は、これまでの最高だった2023年をさらに上回り、平均気温は産業革命前から1.55度上昇しました。世界各地では、猛暑、豪雨、山火事など甚大な被害が起きており、気候危機はまさに危機的な状況にあり、世界は脱炭素化を急激に進めなければなりません。
・そんな状況の中、日本でCO2排出量で政令市トップの川崎市で、新火力発電所の計画が発表されました。
扇町天然ガス発電所建設プロジェクトについて、環境局長に伺います
・事業者はエネオス株式会社で、扇町のエネオスの遊休地に天然ガス発電所を1基作り、水素との混焼発電も検討していくとのことです。
・発電出力は75万キロワットで2033年ごろに稼働予定ということです。
- 川崎市のCO2総排出量と臨海部の発電所から出るCO2の総排出量は?また新規火力発電所のCO2排出量を伺います。
◎答弁
市域の温室効果ガス排出量につきましては、令和4年度の推計結果を2,019万トン C02 としております。
一方で、令和3年度末に策定した市地球温暖化対策推進基本計画において、市内事業者が首都圏に供給する電力を生産する際に発生した温室効果ガス排出量は、約1,600万トン C02と推計しているところでございます。
また、当該発電所の排出量につきましては、令和7年5月に公表された計画段階環境配慮書への記載はございませんでした。
(ディスプレイ)

・CO2排出量では、川崎市は政令市で断トツのトップです。2022年度のCO2排出量は2019万トンということですが、この表は、その少し前の政令市比較です。発電所から出る1600万トンは2259万トンにはほとんど含まれていませんので、川崎市から出るCO2総排出量は3500万トンくらいあります。総排出量の半分近くが臨海部の5か所の火力発電所から出ているのです。これら発電所のCO2削減は市にとって最大の課題です。
・ところが、新規発電所のCO2排出量の記載がないということです。
- 市のCO2削減計画について、CO2排出削減目標と発電所から出るCO2排出量の削減目標を伺います。
◎答弁
市の計画において、市域の2030年度の温室効果ガス排出量の削減目標を、2013年度比で50%と掲げておりますが、市内の発電所については、特段その目標を定めておりません。
(ディスプレイ)

・市の削減目標である2030年度排出量は2013年度比の50%としていますので2030年度には1200万トンに減らさなければならないのです。しかし、これまでの9年で381万トンしか削減しておらず、あと8年で800万トン以上削減が必要です。さらに総排出量でいうと発電所もあるのですが、ここが1600万トンから減らず、しかも33年度以降はさらに増えるのです。
・国際的には、国際エネルギー機関(IEA)は、CO2排出量の4割を占めるエネルギー転換部門、発電部門は2035年には排出量をゼロにする必要があるとしています。22年5月に開かれたG7(先進国)気候・エネルギー・環境相会合の声明でも「2035年までに電力部門の大部分を脱炭素化すること」を確認しました。
・新火力発電所は2033年度稼働ですから、水素混焼を始めても30年代、40年代はCO2を出し続けるのです。とても先進国の35年までに発電部門からのCO2ゼロは達成できません。
- 気候危機が差し迫っている中で、CO2を大量に出す火力発電所を新設することは、市の削減計画に反するのではないか?
◎答弁
国におきましては、再生可能エネルギーの主力電源化の徹底を原則としながらも、火力発電は、依然として国全体の発電量の約7割を占め、重要な役割を担うものとしております。
今後も、国の第7次エネルギー基本計画に基づく、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現の取組を踏まえ、市域の動向を注視していきたいと老えているところでございます。
・国の話をしていて、発電所に関して、市は関係ないような姿勢です。しかし、川崎市の臨海部からCO2を大量に排出する発電所をつくる許可を出すのは川崎市です。市が許可すれば、川崎市だけではなく、日本のCO2排出量は増大し、先進国の目標は達成できないのです。
(計画書・報告書)
・市は、CO2を大量に排出する企業については、削減のための計画書・報告書を求めています。ENEOSの新火力発電所については、要件を満たせば、提出を求める、必要に応じて指導もするということです。
・ENEOSに対して、早急にCO2排出量を含めた計画書の提出を求め、排出量によっては、計画の撤回も含めて指導することを要望します。
扇島の液化水素サプライチェーン実証に向けた基地建設工事について、臨海部国際戦略本部長に伺います。
・
- この基地には、どのようなものが作られるのか?
◎答弁
先月、扇島において、関係事業者が、液化水素サプライチェーンの商用化実証を実施するための国内基地の建設工事に着手したことを報道発表したところでございます。
当該基地につきましては、液化水素貯蔵タンクや海上荷役設備、水素液化設備、液化水素口ーリー出荷設備などが整備される予定となっております。これらの設備を備えた今回の国内基地等を用いて、機器の性能やオペレーション、経済性等の商用化に求められる要件を確認する予定と伺っております。
また、当該基地は、液化水素貯蔵タンクや海上荷役設備など、受入・貯蔵・出荷のための大規模な設備を備えた商用規模の施設である点が、「世界初」になるものと伺っております。
・基地には、水素貯蔵タンクや海上荷役設備など受け入れ・貯蔵・出荷のための大規模な商用設備では「世界初」だということです。
- どこから液化水素を運んでくるのか?いつから商用実証は開始するのか?
◎答弁
本実証事業で使用する水素につきましては、国内で生産した水素を活用する予定と伺っております。
商用化実証は、計画・建設・実証試験の全てを含むため、2021年度から開始しておりますが、実証試験の開始時期は、事業者が提出した環境影響評価準備書において、2028年度中とされております。
・国内のどこから来るのか決まっていないとのことですが、28年から実証試験が始まるとのことです。
・しかし、水素を「つくる」「ためる」「はこぶ」の水素サプライチェーンの実証事業は世界初であり、個々の事業である水素製造、水素運搬船からの荷役、揺れる船からの極低温の液化水素を貯蔵・管理する技術、また、陸揚げする技術などはすべて世界で初めての技術です。どの技術・事業も実証までは行きついておらず、事業が成り立つかどうかの調査段階で商用化まではとてつもなく遠い事業です。
・国内の基地が決まってからも、液化水素の製造、水素運搬船の荷揚げの施設を作るのにかなりの時間を要します。オーストラリアの例を見ても明らかです。全体を2028年までの3年間で実証までもっていくのはとても可能だとは思えません。
・なにより、国内の火力発電所でわざわざ水素を作り、CCSでCO2を地中に貯蔵し、液化水素を作って水素運搬船で運ぶなど膨大なエネルギーと資金がかかります。CO2削減どころかCO2排出量を増大させるだけです。
・2030年度以降は海外から液化水素を輸入するとしていますが、
- 海外水素はどこの国から調達するのか?
◎答弁
本実証事業終了後、社会実装・商用化段階におきましては、関係事業者がこれまで検討してきている複数の海外候補地の中から選定されるものと伺っておりますが、具体的な調達先については、公表されておりません。
・オーストラリアでの液化水素は、2015年から準備してきたのに10年たっても間に合わないということで諦めました。他の海外の候補地を探しているということですが、仮に見つかったとしても、今から水素製造、液化、CCSを整備する必要があり、10年かかっても無理だったオーストラリアをみても、とても5年後に間に合うはずがありません。
・また、オーストラリアは輸出水素はコストがかかりすぎるという理由で撤退し、当初、水素事業に出資予定だったINPEXからは出資も断られたばかりなのです。出資をするところが出るのでしょうか。
- 輸入した水素は、どこで使われるのか?国内需要の目途は立っているのか?
◎答弁
輸入水素につきましては、川崎臨海部及び周辺地域において、主に、ガス火力発電所や製品製造の過程で熱を必要とする産業、水素ステーション等で使用することを見込んでおります。
本市といたしましては、「川崎力ーボンニュートラルコンビナート形成推進協議会」等を通じて、立地企業をはじめ関係企業と連携し、川崎臨海部における水素利活用の段階的な拡大に向けた取組を進めてまいります。
・輸入水素は、ガス火力発電所、化学製品の製造、水素ステーションなどに使用するとしていますが、8割以上はガス火力発電所に混ぜて混焼用に使われます。
しかし、これをやると2050年まで発電所からCO2を排出し、電気料金は2倍になります。
・さらに世界的な大企業では、「つくる」「運ぶ」「使う」「廃棄する」などすべての工程において、CO2排出量を評価するライフサイクルアセスメント(LCA)を強化する動きが強まっています。CO2を排出する水素混焼で発電した電力を使って作った製品は、世界的なサプライチェーンから外され、日本から輸出できなくなる恐れさえあります。
(要望)
・川崎市の臨海部における水素戦略、特に液化水素を輸入し水素混焼による発電は、撤回、見直すよう要望します。



