むねた裕之
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川崎市臨海部の水素戦略:発電コスト2倍でCCS技術など未確立

6月12日、日本共産党の代表質問で「臨海部の水素戦略」について取り上げたので質疑を紹介します。

●質問

褐炭から作った水素をオーストラリアから輸入して水素発電

臨海部の脱炭素、水素戦略についてです。  

今国会で「水素社会推進法」と「CCS事業法」が成立し、政府は低炭素水素の活用とCCS導入の推進を図ることとしています。

この政府の方向に沿って、川崎市は、オーストラリアで褐炭から水素を作り、CO2を回収し地下に貯蔵するというCCS技術を使ってブルー水素を作り輸入する、いわゆる「水素サプライチェーン」を構築するとのことです。輸入した水素は、市内の火力発電所で天然ガスに混ぜて燃やす、いわゆる混焼で発電し、ゆくゆくは水素のみで燃やす専焼に移行するとしています。

2035年までに電力部門のCO2排出ゼロ(先進国)に間に合うのか?

電力部門のCO2削減についてです。

国際的には、国際エネルギー機関(IEA)やG7先進国は「2035年までに電力部門からのCO2ゼロを目指す」と確認しており、気温上昇を1.5度未満に抑えるためには電力部門からの排出を早急にゼロにすることが喫緊の課題となっています。川崎市の市内発電所からのCO2排出量は1600万トンですから、この先進国の目標に照らすと35年までに排出をゼロにすることが最も重要な課題です。

天然ガスと水素との混焼発電について、市が想定している2030年時点での混焼率と市内発電所からのCO2排出量の目標値を伺います。水素混焼から専焼発電に切り替えていくことが想定されますが、混焼発電の段階ではCO2を出し続けます。専焼発電に切り替えるのは、いつになるのか、伺います。また35年までに市内全発電所が専焼発電になるのか、伺います。

水素製造、冷却、運搬、CCSなど莫大なコスト・エネルギーロス

輸入水素についてです。

オーストラリアでの水素製造では、褐炭を1000度に加熱して、できた石炭ガスから水素を作りますが、大量のCO2も排出されます。水素製造、水素を―253度まで冷却する液化、液化水素を船で川崎まで運ぶ運搬、CCSにかかるエネルギーなどを考えると膨大なエネルギーロスとなります。このエネルギーロスは問題と考えていないのか、伺います。

輸入水素の発電コストは火力の2倍、太陽光の4倍

輸入水素のコストについて、水素製造、冷却、運搬、CCSの過程で膨大なコストがかかり、この輸入水素だけを使用した電力コストは1キロワットアワー当たり21円となり、現在の火力発電の電力料金の2倍となります。こんな高い電気料金を市民に押し付けるつもりなのか、伺います。また、これらの過程でCO2を排出したり、化石由来の電力を使わないのか、伺います。

◎答弁

国の第6次エネルギー基本計画では、太陽光等の出力変動を吸収し、電力の安定供給に資する圖原として、火力発電の機能が示されるとともに、その環境対策として、水素等を導入していく方向性が掲げられております。

2030年時点での発電所の水素混焼率及びC02排出量につきましては、水素社会推進法に基づく国の支援制度を今後活用するにあたり、事業者が策定する事業計画において検討されるものと考えております。

次に、水素専焼発電への移行時期につきましては、国のクリーンエネノレギー戦略の中間整理において、大規模水素発電の開始が、 2030年以降とされております。

また、今年度、エネルギー基本計画の改定が予定されており、この中で国全体の電源構成を含めた検討が行れることが見込まれますので、こうした動向を注視してまいります。

川崎臨海部に立地する関係企業につきましては、国の計画等を踏まえ、カーボンニュートラノレの長期ビジョンを示して取組を進めているところでございますので、こうした企業の動きを捉え、 2030年から2050年での間における、ガス火力発電等への水素発電の導入に向けて、関係企業と連携して水素の供給体制の構築等に取り組んでまいります。

次に、輸入水素につきましては、昨年4月の国際エネルギー機関のレポートでは、ブルー・グリーンといった色によらない、 C02の排出量を基準とする「炭素集約度」に基づくサプライチェーン構築の重要性が示されおり、国においても、国際標準となり得る算定方法に則

り、国際的に遜色のない低炭素目標を掲げ、との目標に適合した水素の導入を推進していくこととしています。本市といたしましては、この目標に適合する低炭素な水素サプライチェーンの構築に向けて、関係企業と連携して取り組んでまいります。

次に、輸入水素のコストにつきましては、国においは、海外で製造された安価な水素の活用と、国内の資源を活用した水素の製造基盤の確立を同時に進めていくことが重要であり、長期的には化石燃料と同等程度の水準までコスト低減を目指すしております。

電化が困難な熱需要の多い川崎臨海部におきましては、水素は脱炭素化に有効なエネルギーであることから、規模発電による安定的な水素需要を立ち上げるなど、需給一体の取組を進めることにより、水素価格の低減を図るとともに、国が定める基準に適合した低炭素な水素サプライチェーンを構築してまいりたいと存じます。

●再質問

CCS:米国政府「推進難しい」、日本の業界「技術未確立、コスト高い」

CO2を回収・貯蔵するCCSについてです。

国内外から多くの問題点が指摘されています。米国政府は24年4月、石炭火力発電所の温室効果ガスの排出量をCCSで90%削減するか、できない施設は稼働を認めない規制を導入すると発表しましたが、業界団体は「CCSはまだ経済性がなく導入する段階にはない」として、事実上、推進は難しくなっています。日本では、電気事業連合会は政府に対して「現時点において技術確立、社会実装にかかわる不確実性が高い」、石油鉱業連盟も「多額の投資が必要となる一方、リスクも非常に高い」と推進する業界自体からも問題点を指摘されており、国会の参考人質疑でも「コストが高い」と指摘されています。アメリカ政府や日本の業界から指摘されている 技術の未確立、コスト、リスクなどの問題点を、本市が水素を輸入するとしている28年までにクリアできるのか、伺います。

◎答弁

液化水素サプライチェーンの構築に向けて、現在、水素の製造及び出荷の候補地となるオーストラリア・ビクトリア州において、関係企業が、水素製造設備等の技術調査や事業費の検討、許認可取得に関わる調整などを行っていると伺っております。

また、水素の製造時に生じる二酸化炭素につきましては、オーストラリアにおける二酸化炭素の回収・貯留、いわゆるCCSのプロジェクトにおいて対応することを想定しており、関係企業が、現地の企業等と技術やコスト等に関する検討・調整を行っていると伺っております。

●再々質問

CCS使用の低炭素水素は欧米基準をクリアできず

CCSでCO2を回収した低炭素水素についてですが、国会では、水素1kg作るのにCO2、3.4kg以下の排出をめざすとしています。しかし、この数値ではEUや米国の基準をクリアできません。この低炭素水素で発電して作った製品は、欧米には輸出できないと思いますが、伺います。このようにCCS技術は未確立、作った水素は欧米基準をクリアできず、発電コストは従来の2倍、という水素発電ではなく、電力は太陽光を中心とした再エネに切り替えるべきです、市長に伺います。

◎答弁

低炭素水素等につきましては、先月成立した水素社会推進法において、水素の製造に伴って排出される二酸化炭素の量が一定の値以下であるとされており、現在、具体的な水準について、国際的に遜色のないものとなるよう、国において検討されているととろでございます。本市といたしましては、今後、国が定める要件等を踏まえ、低炭素な水素サプライチェーンの構築に向けて、関係企業と連携して対応してまいります。