むねた裕之
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公共の破壊:人口増なのに公共施設、市職員を減らす

6月12日に行われた、25年6月議会の日本共産党代表質問の「公共の再生」の質疑を紹介します。

●質問

総合計画についてです。

公共施設と人口推計についてです。

 川崎市は、新たな将来人口推計を発表しました。それによると市の人口のピークは5年、後ろに伸びて2035年となり、今後10年間は人口が増え続け、今より人口が減るのは20年後です。総合計画は12年間の計画ですので、当然、今度の総合計画の中心課題は、人口減少ではなく、「人口増加にどう対応するか」ということになります。しかし、現在の市の方針では、人口減少を前提に公共施設の「床面積は増やさない」としており、不足していても増やさず、さらに資産マネジメントで公共施設の統廃合・削減を進めようとしています。これで公共施設を提供するという自治体の公的責任は果たせるのでしょうか。

例えば、市営住宅は、平均倍率が約10倍で応募したけれど入れない方が約6000人いますが、増設する計画はありません。今後さらに人口が増え続ければ、さらに入ることは難しくなり、この状況は今後20年間以上続くことになります。公営住宅法では、第一条で、地方公共団体は「低廉な家賃で賃貸し、社会福祉の増進に寄与する」と規定し、第三条で「常にその区域内の住宅事情に留意し、低額所得者の住宅不足を緩和するため必要があると認めるときは、公営住宅の供給を行わなければならない」とも規定しています。要するに法律では、その地域で低所得者の住宅が不足している場合は、自治体の責務として公営住宅の供給を行わなければならないのです。倍率が10倍で6000人が入れない状況で、自治体の公的責任を果たしているといえるのか、市長に伺います。

また、特養ホームにしても待機者が約2000人いて、介護度が4,5の方でも入れない方が約1000人います。しかし、市の特養ホームの計画では、新規開設は皆無です。一般の保険では、提供されるべきサービスが提供できなかったら裁判で訴えられます。介護保険の場合は、川崎市が運営主体であり、サービスを提供する責任があります。特養ホームの入居がサービスにあり、その条件を満たしている被保険者に、不足しているから入れませんでは許されないと思いますが、市長に伺います。

 市の資産マネジメントでは、人口減少を前提に「公共施設の床面積は増やさない」とし、さらに休日急患診療所や子ども文化センター、老人いこいの家、様々な福祉施設の統廃合を計画しています。しかし新らたな人口推計では、10年間は人口が増加します。公共施設の1人当たりの床面積についても、川崎市は政令市の中で下から4番目で、北九州市、大阪市、神戸市の半分しかありません。人口は増加し、ただでさえ少ない床面積なのに、人口減少を前提にして「公共施設の床面積は増やさない」、「統廃合で減らす」という方針は誤りです、市長の見解を伺います。

公共施設の民間活用についてです。

 この間、公共施設に民間活用の手法であるPFI、指定管理者制度を導入することによって、様々な問題が噴出しています。

等々力緑地の再編整備では、PFIで民間企業に設計・建設・管理運営を任せた結果、樹齢60年以上の樹木を800本伐採し、広場がつぶされスーパー銭湯や商業施設が乱立し、日産スタジアムの2倍の駐車場が建設され、さらに総事業費が当初の2倍の1200億円にもなる計画が出され、市民の中で大きな反対運動が起きています。それにもかかわらず、PFI法のために各工事費も事業費の算定根拠も非公開、どんな商業施設が入るのかも未定ということで、事業費の精査もできず、市民や行政が関与できない制度となっています。市民の憩いの場である公園が、樹木は伐採され民間企業の収益を上げるために利用されてしまう、こんなことを許してよいのか、市長に伺います。

 指定管理者制度の問題では、北部地域療育センターの指定管理者、同愛会が市内外の施設で重大な事故や事件を繰り返しており、議会では不安や懸念の声が噴出しました。指定管理者制度の導入で直営時代に培われた本市のノウハウが失われ、市の権限では、内部の人事を入れ替えるなど根本的な改善を直接図ることはできないなど、この制度の問題点が明らかになりました。全国では、指定管理者制度の事業が、経営悪化で解散、撤退したために、利用者が放り出される事例も多く発生しています。高齢者や障碍者、子どもの命を預かる施設にとって、この制度はふさわしいといえるのか、市長に伺います。

◎答弁

市営住宅につきましては、住宅セーフティネットの中 核として、社会環境の変化に合わせたストックの最適化 を推進するとともに、より公平、的確な入居機会の提供等 に取り組むなど、法の趣旨を踏まえつつ、公営住宅の供給 主体として持続可能な運営を行っているととろでございます。 今後につきましても、当面は、管理戸数を維持しながら、 市営住宅の適切な管理運営を行うとともに、民間賃貸住 宅を活用した重層的な住宅セーフティネットの構築に向 けた取組を推進し、住宅に困鯛する低所得者等の居住の 安定確保に努めてまいります

特別養護老人ホームにつきましては、T第9期かわさき いきいき長寿プラン」に基づき、令和7年度におきまして は、「長沢壮寿の里」の建て替え等により、 220床の整 備を予定しております。 一方で、利用者が求める二ーズや、受け皿となるサービ スも多樹ヒしていることから、今後につきましても、特別 養護老人ホーム、介護老人保健施設などの介護保険旛設 サービスや、認知症高齢者グループホームなどの居住系 サービス、在宅生活を支える地域密着型サービスをバラ ンスよく組み合わせて、整備を進めてまいります。

資産マネジメントについての御質問でございますが、今般、総合計画改定に向けて行った1寺来人口推計では、 人口のビークの時期が令和17年頃の見込みとなりまし たが、近い将来、急速な高齢化の進行と人口減少への転換 が見込まれております。 このため、引き続き見込まれる人口増加により、多様 化・増大化する市民二ーズに的確に対応しつつ、それ以降 の人口減少への転換や少子高齢化の更なる進展を見据えた対応をしっかりと行う必要がございます。 「資産マネジメント第3期実施方針」では、おおむね 30年程度の長期的に目指すべき姿として、「必要な時期 に、必要な規模の行政機能の提ι奨」を掲げ、市民二ーズ等 を把握した上で、必要な機能の整備を図る「機能重視」の 考え方に基づき、資産保有の最適化の取組を推進しているととろでございます。 今後につきましても、市民の皆様の御意見を丁寧に伺 いながら、将来世代の負担に配慮しつつ、より一層利用し やすい環境への転換を目指し、取組を進めてまいります。

等々力績也再編整備についての御質問でございますが、当緑地におきましては、人々の日常とつながり、人生 の大切な節目になり、まちの誇りになる緑地を目指して、 民間活力を導入して再編整備に取り組んでいるととろで ございます。 現在、物価高騰等の対応として、専門家の助言を受けながら工事費の精査や整備内容の見直しなどを進めているところでございまして、今後、これらについて、市民のみなさまに丁寧に説明し、この再編整備が「良かった」 と言われるものになるよう、引き続き取り組んでまいります。

指定管理者制度は、多樹ヒする住民二ーズに、より効率 的・効果的に対応するため、公の施設の管理に民間の能力 を活用し、住民サービスの向上とともに、経費の縮減を図 ることを目的に導入しております。 制度の運用に当たりましては、業務の陛質や安全性、費 用対効果などを考慮した上で、適切な運営状況を確認す ることが重要であり、施設特性に応じた実効的なモニタ リング等を実施するなどで必要な見直しを行い、サービスの質や安全陛の確保を図りながら、引き続き民間活用 を推進してまいります。

●再質問

公共施設と人口推計についてです。

 約6000人も入れない市営住宅の公的責任について、「公営住宅法の趣旨を踏まえつつ」「管理戸数を維持する」という答弁でした。しかし、法の趣旨は「不足している場合は、公営住宅の供給を行わなければならない」と規定しているのです。今後10年は人口増加する中、市の「戸数を維持する」、要するに「増やさない」とすること自体、法の趣旨に反しています。

公共サービスを担う市職員についてです。

川崎市は、この20年で人口は増加しましたが市職員を減らし、さらに公共施設の民間活用で市職員が誰もいない施設が増えており、様々な問題が起きています。

コロナ禍の2021年8月、川崎市は、コロナ重症病床の使用率が100%を超えコロナ病床は満床状態。自宅療養者数は3000人を超え、9割の方が入院できず、ほとんどの方が自宅療養となっている事態になり、保健所に電話してもつながらず、緊急搬送困難事例が200件近くになるなど救急車を呼んでも来ない事態が激増しました。緊急事態宣言下のどの都道府県と比べても、すべての数値で最悪の状況となりました。この大きな要因には、病床自体が足りない問題もありますが、医療、保健所、消防を担う市職員の不足が大きな原因です。

市はこの20年で人口は25万人増えたのに、市職員は1500人も減らし、人口当たりの市職員数では、政令市の中で下から5番目です。特に市の保健所職員は、人口当たりで横浜市の半分程度であり、消防職員の体制も国の基準を満たしていない状況でした。医療従事者、保健所職員、消防職員など「市民の命を守る」ことを責務とする市職員が足りてなくてどうやって自治体の公的責任は果たせるのか、市長に伺います。

指定管理者が管理・運営している市民ミュージアムは2019年東日本台風による浸水で川崎に関連する考古・歴史・民俗資料及び芸術作品や市指定文化財を含めた約23万点の貴重な収蔵品に被害がでました。当時、市民ミュージアムは指定管理者制度のため、市職員がいない状況で、台風の予測・被害状況がつかめず、収蔵品を避難させる判断が遅れ、市民の財産である収蔵品に大きな被害が出てしまいました。現在、市は、指定管理者制度を様々な公共施設に広げており、市職員が一人もいない施設が増えています。それぞれの施設で災害時、市職員がいないもとで、台風や豪雨の予測、震災の被害状況を把握し、市民や財産を避難させる判断や指示などどうやって対応するのでしょうか。公共施設を指定管理者に任せて、災害時の避難など「市民の命・財産を守る」という自治体の責務を果たせるのか、市長に伺います。

◎答弁

公共サービスを担う職員等についての御質問でございますが、職員配置につきましては、社会状況の変化や市民二ーズに的確かつ迅速に対応するため、これまでも業務実態 等を踏まえて行っており、今後も、行政が担うべき役割を 確実に果たせるよう、適切に取り組んでまいります。 災害時における市と指定管理者との役割につきまして は、「災害対応に関する方針」に基づき、適切な役割分担 のもと、協力して対応することとしており、利用者及び施 設の安全を確保しているところでございます。

●最終意見

総合計画への提案です。

これまで述べてきたように川崎市の公共施設について、急激な人口増加にもかかわらず、公共施設を増やさず公的責任を果たしてきませんでした。公共施設の民間活用によって、公園は憩いの場から民間企業の儲けに利用され、高齢者、障碍者、子どもの施設では、同愛会による死亡事故や事件、母子育成会による経営悪化や横領事件、宮前区の民間保育園の突然の閉園など、多くの問題が起きています。人口増加のなか市職員を減らしたため、コロナ過での医療崩壊、災害時の避難など「市民の命と財産を守る」という自治体の責務が果たせない状況になっています。

このように公共施設、サービスが壊されてきた「市の公共を再生」するために、総合計画において、第1に、将来の人口増加に対応するためにも、公共施設、市職員は現在の不足分を早急に補充し、人口増に合わせて増やすこと。第2に、公共施設の民間活用の問題点を検証し、これ以上対象を広げないこと。特に公園、また人の命にかかわり、専門性、継続・安定性が要求される施設、老人福祉施設、障碍者施設、療育センターなどは直営に戻すことを要望します。