代表質問の報告【会計年度任用職員について】
市の会計年度任用職員について
全国の地方自治体では、この30年間で正規職員が55万人削減され、非正規公務員(会計年度任用職員)に置き換えられてきました。川崎市でも10年間で正規職員を500人減らし、会計年度任用職員を300人増やしており、今まで正規職員がやってきた仕事を非正規の方に移行しています。
会計年度任用職員の給与改定についてです。
総務省が本年5月2日に、常勤職員の給与が改定された場合における会計年度任用職員の給与については改定の実施時期も含め、当該常勤職員の給与の改定に係る取り扱いに準じて改定することを基本とするようにと通知を出しました。常勤職員の給与引き上げが行われた後、10月20日には総務省副大臣の通知、11月24日には大臣が国会答弁で「常勤職員の改定に準じて適切に対処」するようにと繰り返し強調しています。
本市常勤職員の給与引き上げについて月額は本年4月1日に遡り、期末手当の支給は本年12月から支給となりました。会計年度任用職員の給与引き上げも国からの通知通り、月額は本年4月1日に遡り、期末手当は12月から支給改定すべきです。伺います。
任用制度「5年ごとの公募」についてです。
川崎市の場合、再度の任用について、4回まで更新されますが、5回目は一般公募となります。民間の有期雇用の労働者の場合、5年後の更新の際に、無期雇用転換の申込権が発生しますが、会計年度任用職員には、その権利もありません。「明確な理由がないまま雇止めになった」、「失業する可能性がありながら3月を迎えるのが恐怖」など会計年度任用職員にとって、理不尽な雇止めや「5年ごとの公募」は恐怖となっています。
図書館司書や保育士、保健師、助産師、医療従事者、学校の教職員、消費生活相談員などその地域とつながることが重要で継続性、専門性が求められる業務です。しかし、そういう方も、5年ごとに雇止めになる会計年度任用職員となっており、賃金が低い不安定雇用となっています。無期雇用転換の権利もなく、理不尽な雇止めや業務の継続性、専門性を維持できないような「公募」は、公務員の雇用形態として、制度上の問題があるという認識はあるのか、伺います。
答弁:総務企画局長
会計年度任用職員の給与改定につきましては、常勤職員とは異なり、任用期間や勤務時間が様々であり、遡及の適用となる職員、ならない職員の条件や、支給額の計算におきましても、月額、日額、時間額の支給方法に応じた複雑な対応が求められるところでございます。
正確な給与支給を行うためには、こうした様々なケースに関する課題の整理や要件の精査等、詳細な制度設計が必要となりますことから、給与改定における遡及の取扱いにつきましては、令和6年度から実施するものとした上で、このたびの給与改定につきましては、国の通知の趣旨を踏まえ、本年12月から適用するものとしたところでございます。
また、期末手当につきましては、条例により、常勤職員の規定を準用するものとしておりますことから、本年12月期支給分から、常勤職員に合わせ引上げるものでございます。
次に、会計年度任用職員の公募についてでございますが、会計年度任用職員制度は、地方公共団体における行政需要の多様化等に対応し、公務の能率的かつ適正な運営を推進することを目的に、地方公務員法及び地方自治法に規定された制度でございまして、その業務については、配属された部署内で、常勤職員が行うべき業務以外の指定された業務を担うものと整理しているところでございます。
任用時には、法の規定により原則として公募による選考が求められていることから、本市においても原則公募で選考を行っているところでございます。また、勤務実績等に基づく能力実証により、 4回まで公募によらない再度の任用を行っております。再度の任用を4回行った場合には、改めて公募による選考を行っており、合格した場合には新たに任用するものとしております。
公募は、均等な機会を付与するという考え方を踏まえつつ、会計年度任用職員の職にふさわしい人物を採用することを目的に行うものであることから、引き続き、法の趣旨に則り、適切に行ってまいります。
【再質問】
再質問の前に意見を述べます。
会計年度任用職員の給与改定について、本市常勤職員の給与引き上げについて月額は本年4月1日に遡り、期末手当の支給は本年12月から支給されます。国から繰り返し出されている「常勤職員の改定に準じて適切に対処するように」との通知などのとおり、本市の会計年度任用職員も準じて引き上げていくよう求めたところ、月額と期末手当とも12月から引き上げるとの答弁でした。神戸市では約3000人、神奈川県は約7000人でも4月遡及改訂を予定しているとのことです。本市会計年度任用職員の約7割が年収250万円以下です。どうやって暮らしていけるのでしょうか。本市も国の通知どおり、今からでも検討し、4月に遡って給与を引き上げるよう強く要望します。
会計年度任用職員、任用制度「5年ごとの公募」について
5年ごとに雇止めになる公募という制度は、継続性、専門性という観点から問題があるのでは、という質問に対して、「法の規定により原則として公募という選考が求められている」という答弁でした。しかし、「公募」について、総務省は、昨年12月に改定した「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」の中で、「公募を行うことが法律上必須ではない」「地域の実情等に応じつつ、適切に対応されたい」という見解です。特に図書館・学校司書や保育士、保健師、助産師などは、経験と信頼、継続性、専門性が必要であり、それらを保証するためには、雇用の継続・安定が必要です。「公募は必須ではない」のですから、こういう職種は「実情に即して」公募はやめるべきです、伺います。
専門性と賃金について
会計年度任用職員の給料表では、資格や専門性が求められる職種である、放射線技師、臨床検査技師、保育士、栄養士などは、時間額で任用すると時給1300円前後、フルタイムで働いても月給約18万円で、正規職員の初任給基準の賃金しかもらえません。とても専門職としての賃金とは言えません。放射線技師、臨床検査技師、保育士、栄養士がどうして「初任給基準」なのか、伺います。助産師、看護師なども時給1400~1500円です。求人サイトでも看護師の平均時給は2500円前後です。時給1400円というのは、あまりにも不当な時給ではないのか、伺います。
図書館や学校の司書についてですが、12月に改定された時給でも1194円で、この額は「単純な業務」よりも低いランクです。図書館・学校司書というのは、大学での資格取得が必要な専門職なのに、どうして「単純な業務」よりも低い賃金なのか、どういう評価をしているのか、伺います。
答弁:教育次長
図書館において会計年度任用職員として設置している職は「図書館司書補助」でございまして、司書等の資格を採用の要件としておらず、カウンター業務や図書資料の配架など、図書館運営に関する業務の補助を行うこととしております。
また、学校において会計年度任用職員として設置している職は「学校司書」でございまして、こちらも司書等の資格を採用の要件としておらず、教職員等の指導助言のもと、学校図書館の運営補助等を行うこととしておりますので、双方とも一般事務職の時間単価と同額としているものでございます。
答弁:総務企画局長
募集、採用に当たりましては、地方公務員法の平等取扱いの原則及び成績主義を踏まえ、原則公募の選考による均等な機会を設けるとともに、勤務実績等に基づく能力実証により、 4回まで公募によらない再度の任用を行っているところでございますので、引き続き、法の趣旨にのっとり、適切に行ってまいります。
次に、給与水準についてでございますが、会計年度任用職員については、地方公務員法に定める職務給や均衡の原則等の給与決定の原則にのっとり、当該会計年度任用職員の職務の内容や責任等を踏まえた上で、常勤職員の初任給基準額を上限の目安とする国の通知により設定するものでございまして、適切な水準にあるものと考えております。
【再々質問】
会計年度任用職員、専門性と賃金について
放射線技師、臨床検査技師、保育士、栄養士がどうして「初任給基準」なのか、助産師、看護師などの時給がどうして民間より1000円も安いのか、という質問に対して、答弁は「常勤職員の初任給基準額を上限の目安とするという国に基づいて」というものでした。しかし、引用した同じ総務省のマニュアルでは、わざわざ後の回答で、初任給基準額を上限というのは「あくまで「定型的・補助的な業務等に従事する事務補助職員」についての例であり、すべての職種について、示しているのではない」と述べています。さらに「例えば、保育士や看護師等の専門職について、民間の給与水準も踏まえ、その上限を事務補助職員よりも高く設定することが考えられる」と述べており、保育士や看護師など専門職を初任給基準額とするのは、総務省のマニュアルから言っても間違いです。総務省のマニュアル通り、専門職は、民間の給与水準も踏まえて賃金を上げるべきです、伺います。
図書館・学校司書について、どうして「単純な業務」よりも低いランクなのか、という質問に対して、答弁は「司書等の資格を採用の要件にしていない」ということです。そうなると学校について言えば、常勤職員が必ず資格を持っているわけではないので、学校で、司書の資格を持つ方が全くいない場合があるということです。大量の図書を扱い、市民や子どもたちに提供する公的施設で、図書の専門家が一人もいないというのは、公共施設として不適切ではないのか、伺います。
「官製ワーキングプア」という問題について
この間、多くのマスコミで、会計年度任用職員を取り上げ、「官製ワーキンギプア、月の手取りは10万円」などと報道し、社説でも「行政で働いていても、安心して暮らせるだけの収入を得られないようでは話にならない」と述べています。
新卒で川崎市立小学校の事務支援員となった青年は、「勤務時間が週20時間までと決められ、月収は手取りで月8万円。今は自宅だから暮らせるが、とても自立はできない。収入を補おうとダブルワークをしても月10万円程度でぎりぎり」と話してくれました。学校の事務支援員は、市の改定前の給与表では、時給は1118円と最賃ギリギリです。このように多くの若い世代が会計年度任用職員として働いていますが、これでは暮らしていけず、ダブルワーク、トリプルワークをしてやっと暮らしているのが現実です。月収8万円でダブル・トリプルワークを余儀なくされ、5年ごとに雇止めされる働き方で、将来に希望を持てると思うのか、市長に伺います。このように自治体が、働いても生活できないような雇用「ワーキングプア」を大量に作り出すということでよいのか、市長に伺います。
男女の賃金格差、ジェンダーの問題
市の会計年度任用職員の約8割が女性です。その賃金は年収で正規職員の3分の1、時給にしても最低賃金ぎりぎりで、専門職でも正規や民間と比べて全く低い賃金しか払われていません。結果として、会計年度任用職員制度は、女性の賃金を下げ、男女の格差を広げ、ジェンダー不平等を助長しているのではないのか、市長に伺います。
答弁:市長
募集、採用に当たりましては、地方公務員法の平等取扱いの原則及び成績主義を踏まえ、原則公募の選考による均等な機会を設けるとともに、勤務実績等に基づく能力実証により、 4回まで公募によらない再度の任用を行っているところでございますので、引き続き、法の趣旨にのっとり任用してまいります。
給与水準につきましては性別に関わらず、法に定める脂璃給等の原則に基づき、職務の内容や責任等を踏まえ、決定しておりますので、適正な給与水準となっているものと認識しているところでございます。
答弁:総務企画局長
給与水準につきましては、常勤職員が行うべき業務以外の指定された業務を担うものとする会計年度任用職員の職の性質を踏まえ、その職務の内容や責任の程度等に応じて決定するものと考えており、引き続き、適切に対応してまいります。
答弁:教育次長
学校図書館におきましては、司書等の資格を採用の要件とした総括学校司書を各区に3名配置し、全校を巡回訪問しており、教職員や学校司書に指導・助言を行うなど読書活動の支援を行っているところでございます。
学校司書につきましては、川崎市総合計画及びかわさき教育プラン第3期実施計画に基づき、まずは全小学校への学校司書の配置拡充に向けた取組を着実に推進してまいります。
【最後の意見】
会計年度任用職員について
月収8万円でダブル・トリプルワークを余儀なくされ、5年ごとに雇止めされる働き方で、将来に希望を持てると思うのか、自治体が、働いても生活できないような「官製ワーキングプア」を大量に作り出すということでよいのか、と質問しましたが、市長の答弁は「法にのっとり任用」「法に基づき適正な給与水準」だというものです。しかし、どちらも総務省のマニュアルに沿ったものでないことは再度指摘しておきます。
「5年ごとに雇止めになる公募」「異様に低い賃金」など、会計年度任用職員制度の抜本的な見直しを強く要望します。
もともと会計年度任用職員は正規を非正規に置き換えてできたものであり、これほどの問題点が出ているわけです。正規職員と同じ仕事をしている方、職種については、正規で雇用することをあらためて強く求めます。