空き家対策:他都市のように補助制度の創設を
7月6日、川崎市議会6月議会でのむねた市議の一般質問「空き家対策について」を紹介します。
●質問
「空き家対策について」です
空き家の実態について、まちづくり局長に伺います
・全国で空き家が増えています。1988年に394万戸だったのが、2018年には849万戸。居住目的のない空家は349万戸で20年前から、ほぼ倍増しています。全国で所有者が不明である土地の面積は410万haに及び、これは九州の全面積を上回るものです。
- 川崎市での一戸建ての空き家戸数を伺います。
平成30年度の国の住宅・士地統計調査によりますと、 本市において、長期にわたって居住者のいない一戸建ては、約5200戸でございます。
●質問
・川崎市では、空き家データベースに登録されている空き家(登録空き家)が650件あり、建物に著しい破損がみられる空き家を除くと、軽微な改修や樹木の伐採で利用可能な空き家が620件あります。
(空き家対策の制度)
・今、求められているのは住宅に困窮する人々に適切な住宅を供給するために、空き家を有効活用することです。
- 川崎市には、どのような空き家対策があるのか?
◎答弁
本市の空家対策につきましては、第2期川崎市空家等対策計画に基づき取組を進めております。
具体的な取組といたしましては、広く市民を対象としたセミナーなどの開催による意識啓発や、民間事業者と連携した中古住宅の流通促進などの予防的取組の推進 空家所有者と利活用希望者をつなぐ空家利活用マッチング制度の試行など空家利活用の推進、管理が不適切な空家への指導など管理不全空家等の防止・解消に向けた取組の推進など、様々な対策を実施しているところでござ います。
●質問
・空家所有者と利活用希望者をつなぐ空き家利活用マッチング制度があるということですが、
- マッチング制度の「対象となる利活用分野」と利活用登録件数を伺います。(2021年度からの通算)
◎答弁
空家利活用マッチング制度の対象となる分野につきましては、地域交流、福祉、居住支援、子育て支援等、地域のまちづくりに資する空家の利活用としており、これまでの利活用希望者の登録件数は17件でございます。
●質問
・地域交流では、コミュニティカフェ、集会場、福祉分野ではデイサービス、グループホーム、居住支援では、高齢者のシェアハウス、教育分野では、いろいろな教室、防災では防災倉庫などです。
・住宅困窮者のための住宅供給としての制度としては、対象範囲が狭いようです。
- マッチング制度の「対象となる空き家」と空き家登録件数を伺います。(2021年度からの通算)
◎答弁
空家利活用マッチング制度の登録の対象となる空家つきましては、所有者全員の同意が必要で、建築基準法に基づく確認済証が交付され、現地において建築基準法に違反していないことが確認された空家しており、これまでの登録件数は5件でございます。
●質問
- 川崎市で、これまでにマッチングが成立した件数を伺います。
◎答弁
令和3年度から試行実施しております本制度につきましては、これまでに9回引き合わせを実施しておりますが、成立した案件はございません。
●質問
・空家データベースに登録しているのは650件もあるのですが、21年度からスタートしたマッチング制度への空き家登録件数はわずか5件、利活用希望が17件、マッチングは成立したのはゼロだということです。
・市では毎年、データベースに登録している所有者にダイレクトメールを送っているということですが、それでも登録件数が一桁というのは、いろいろ不十分な点があるように思います。
(問題点・補助制度)
- 登録件数やマッチング件数が少ないというのは、どんな課題があるからなのか?
◎答弁
登録空家数が増加しない原因につきましては、これまで本市が把握している空家所有者に対して実施したアンケートや個別の相談の中で、「他人に賃貸することに対する煩わしさ」や、「家族の反対」、また、「空家の古さ」や 「空家内の残置物が整理できていない」等により、貸し出 すことを疇曙しているなどの意見を伺っております。 次に、マッチングが成立して.いない原因につきましては、登録空家の件数が少なく、建物の老朽化や家賃などの 条件が利活用希望者の希望に合致しないことが原因であると考えております。
●質問
・一般的には、空き家登録件数やマッチングの成立件数が少ない原因の1つが、改修や家賃に対する補助がない、登録するメリットがないということです。
・川崎市の意向調査でも、「困っていることの」のトップが「老朽化」で、「支援してほしいこと」のトップが「改修等の工事、取り壊しなどの費用の支援」でした。
- 他の政令市では、どのような補助制度を実施しているのか?
◎答弁
他指定都市における空家利活用に対する補助制度につきましては、地域交流や福祉などへの活用を目的とした 改修費用や、残置物の整理に要する費用等に対する補助制度がございます。
●質問
・新潟市では、福祉活動活用や地域活動活用のための改修費用には補助率1/3、上限100万円、耐震改修を合わせると上限をプラス100万円支給しており、21年度実績は39件。
・京都市では、市の活性化につなげる目的での改修費用には補助率2/3、上限60万円補助し、21年度実績は31件です。
- 川崎市でも、他の政令市のような補助制度を検討していくのか?
◎答弁
現在取り組んでいるマッチング制度の試行的取組が3年目を迎えることから、今後、この取組結果の検証を行うとともに、他都市での補助制度の効果や実績などの利用状況の調査等を行ってまいりたいと考えております。
●質問
・他都市での補助制度を調査していくということですが、20政令市中9都市が補助制度を実施しています。ぜひ、他都市のような改修費用や解体費用に補助する制度を創設したり、対象範囲を住宅困窮者向けの住宅供給のためにも制度が使えるように範囲を広げることを要望します。
(国のセーフティネット制度)
・国は、2017年、住まいの確保に困る人と空き家をつなぐ「住宅セーフティネット制度」という仕組みを作りました。
・国では、家主側が住まいに困っている人に貸すことを約束する「専用住宅」として物件を登録する場合、改修費用補助や家賃低廉化への補助(1戸当たり最大月4万円)、家賃債務保証料低廉化への補助といったメニューが用意されています。
(家賃低廉化、シェアハウス)
・注目すべき動きも出ています。母子家庭を取り巻く環境は厳しく、住宅に窮する親子が増えています。ひとり親の居住貧困問題に取り組んでいる追手門学院大学の葛西准教授によると「不動産市場が母子世帯を消費者として意識し、2000年代後半から空き家を利用したシングルマザーシェアハウスが登場している」と述べています。
・横浜市のシェアハウス(YOROZUKA)の例(家賃低廉化、月4万円)がマスコミでも紹介されています。
- 川崎市でも横浜市のように国のセーフティネット制度を活用した、空き家利活用を進めていくのか?
◎答弁
住宅確保要配慮者への空家を活用した居住支援につきましては、要配慮者を支援する団体等に空家利活用マッチング制度を活用していただき、要配慮者へ賃貸することは可能となっております。 また、このマッチング制度を活用した事例ではございませんが、現在、要配慮者を支援する団体が、1棟全体が空室となっていたアパートを借り上げ、要配慮者へ転貸 している事例もございます。 今後、居住支援協議会において、こうした事例について 協議し、空家等を活用した居住支援の充実を図ってまいりたいと考えております。
(まとめ)
・根本には、公営住宅が足りないという問題があります。
・また、地球環境や気候危機の問題がある中で、住宅の「スクラップ&ビルド」政策の転換が必要です。空き家の発生による建物破壊は極限の浪費であり、同時に環境破壊につながります。その意味でも、他の政令市のような補助制度、国のセーフティネット制度なども活用して、ぜひ、住居困窮者に対して、適切な住宅を供給する制度の充実を求めておきます。