むねた裕之
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マイナカード:トラブルの調査と保険証の廃止の撤回を

7月6日、川崎市議会6月議会でのむねた裕之市議の「マイナンバーカードについて」の一般質問を紹介します。

●質問

マイナ保険証について、健康福祉局長に伺います。

・マイナンバーカードを健康保険証として利用できる「マイナ保険証」で誤登録が相次いでいることを受け、全国保険医団体連合会(保団連)は、アンケートを実施し、オンラインで保険証を確認するシステムを運用している医療機関のうち、約6割で「他人の情報がひも付けられていた」などのトラブルが発生していたということです。最も多かったトラブルは「患者情報が正しく反映されていなかった」で、次が「カードリーダーもしくはパソコンの不具合でマイナ保険証を読み取れなかった」、「ICチップが破損するなどして読み取れなかった」などです。

・保団連はマイナ保険証が無効などと表示され「無保険扱い」となった患者に対し、医療費などを10割負担で請求した事例が1291件あったことを明らかにしています。

  • 本人・資格確認ができない場合、本人は10割負担となるのか?
  • 本人・資格確認ができない場合、医療機関での負担は発生するのか?

◎答弁

医療機関の窓口におきまして、機器のトラブルなどにより、オンライン資格確認が行えない場合につきましては、医療機関において必要な情報を患者から収集することにより、本来の負担割合で保険診療を受けられるよう、 現在、国において検討が進められております。 また、保険者負担分につきましても、医療機関が審査支払機関に請求することが可能となるよう併せて検討されているところでございます。

●質問

・資格確認ができない場合は、本来の負担割合、3割で受けられるということです。医療機関からは「事後に資格確認ができなかった場合、残りの7割分は未収にならないか」との批判の声がありますが、答弁では医療機関は未収にならないように支払機関に請求できるということです。

  • 医療機関からのトラブルの報告は受けているのか?市の相談窓口はあるのか?

◎答弁

国民健康保険加入者に係るお問い合わせ等につきましては、各区役所保険年金課や、本市保険コールセンター にて対応しているところでございますが、これまでに、マイナンバーカードによるトラブルに繋がったケースな どの報告は伺っておりません。

●質問

・問い合わせは、各区役所保険年金課か、保険コールセンターということです。

  • 各医療機関に対して、どのような指導、援助をするのか?

◎答弁

医療機関において、オンライン資格確認が行えない場合などの対応につきましては、今後、厚生労働省から関係団体を通じて、各医療機関に適切に周知されるものと伺っております。 なお、本市国民健康保険加入者であれば、各区役所保険年金課にお問い合わせいただくことにより、資格情報の御案内などを行っております。

●質問

・区役所の保険年金課で相談ということですが、マイナ保険証の導入によって、地域の零細病院では、大変な問題が起きています。新聞報道では、「マイナ保険証で、地域住民の健康を見守る小さなかかりつけ医が廃業の危機に立たされている」と述べて、「マイナ保険証導入で機器が必要になるほか、診療報酬の請求もオンラインが主流になり、医療デジタル化についていけなくなっている。厚労省によると紙で請求する医療機関は全国で7700機関に及ぶ」と述べています。零細病院の廃業にもつながる問題になっています。

・また、市民からの問い合わせについても、新聞報道では、「ある女性は総務省に電話、窓口担当者は「そんな話聞いたことがない。デジタル庁に」。その後、厚労省、社会保険基金、国保中央会、別人の国保組合とたらい回しになった」と述べています。

  • 市民の方の相談窓口はあるのか?

◎答弁

国民健康保険加入者に係るお問い合わせ等につきましては、本市保険コールセンターにて対応しているところでございますが、マイナンバー制度の一般的なお問い合わせや御相談等につきましては、国の「マイナンバー総合フリーダイヤル」を御案内しているところでございます。

●質問

・市民の相談窓口は、市の保険コールセンターか、国のマイナンバー総合コールセンターということです。

・しかし、別人の医療情報が紐づいているという問題は、単なる相談で解決するような問題ではありません。別人の情報をもとに医療行為や薬剤の投与が行われることは生死にかかわる問題です。国もやっと「従来の保険証も持参を」と呼び掛けていますが、そもそも紙の保険証を廃止すべきではありません。

(高齢者施設での管理)

・保団連アンケートでも高齢者施設の94%が、マイナカードの管理(暗証番号を含む)はできないと回答しています。また、要介護の方や一人住まいの高齢者の方は、どうやって申請・管理するのかなどの声が出ています。

  • 施設入居者、独居高齢者の申請・管理は誰がするのか?

◎答弁

高齢者入所施設を利用されている方や、ひとり暮ら 高齢者など、本人により行って頂くことが基本になりますが、申請が困難な方などにつきましては、御家族や代理人による取得が認められております。

●質問

・高齢者施設でのマイナカードの管理について、多くの施設では、現在、ほぼ全員の健康保険証を原本で預かり、毎回の受診の付き添いをしているとのことです。保団連の竹田会長は「マイナ保険証と暗証番号を施設で管理する責任はあまりにも重大。担い手不足とコロナ対応で苦労を重ねている職員に、さらに重大な責任を負わせるような進め方はやめていただきたい」と訴えています。

  • 高齢者施設のこの様な実態に対して、どのような援助、対応をするのか?

◎答弁

施設入所者の保険証等の管理の在り方につきましては、 取扱いの留意点を整理し、安心して管理することが出来る環境づくりについて、国において議論されているところですので、今後の動向を注視するとともに、施設職への新たな業務負担が生じないよう、神奈川県を通じて国に要望しているところでございます。

●質問

・どのように管理するかは、国でも未解決で、「新たな業務負担にならないように」といいますが、新たな負担になることは明らかです。高齢者施設での管理という面からも保険証を廃止すべきではありません。

(健康保険証の交付義務)

現行制度では、「保険証は毎年届くもの」が新制度では「マイナカードを持たない人は、資格確認書を発行するが1年ごとに申請が必要であり、保持者でも5年ごとに申請が必要となっています。

  • 一人暮らしの高齢者など更新し忘れて「無保険者」となる危険性はないのか?

◎答弁

マイナンバーカードをお持ちでない方につきましては、被保険者からの申請に基づき交付する資格確認書により 保険診療を可能とすること。 資格確認書の申請が期待できない方につきましては、保険者が必要と認める場合、職権による交付も可能とすること。 資格確認書が交付される方につきましては、有効期限が来る前に更新の案内を送付すること など、現在、国において検討が進められております。

●質問

・答弁は「資格確認書の申請が期待できない方につきましては、職権による交付も可能」といいますが、そもそも申請ができない方をどうやって見つけるのでしょうか。このままでは、申請できないなど「無保険」の方を多数生じかねません。

・国民皆保険制度の下で、国・保険者は被保険者全員への交付が義務付けられています。「保険証を被保険者に届けることは国、保険者の責務」です。

  • この保険証の交付義務をどうやって保証するのか?

◎答弁

健康保険証を廃止する規定などを盛り込んだ改正マイナンバー法が6月9日に公布され、令和6年秋に施行される見込みでございます。 被保険者の皆様が確実に保険診療を受けることができるよう、今後の国の動向を注視しながら、適切に対応してまいりたいと存じます。

●質問

・答弁は「国の動向を注視する」ということですが、このままでは、一人暮らしの高齢者、要介護や障害を持つ方、すべてに保険証、資格確認書が交付されるとはとても思えない。これでは、交付義務を果たしたとは言えません。これを保障するには、今まで通り健康保険証を交付するしかありません。

(人権、憲法との関連について)総務企画局長に伺います。

・改定法ではマイナンバーカードの使途を広げていく方向ですが、

  • 今後、マイナンバーの使途拡大をしていくのか?

◎答弁

マイナンバーの利用範囲につきましては、令和6年度末までにマイナンバーカードと運転免許証の一体化を行うほか、従来の社会保障・税・災害対策以外の分野が対象になるなど、国において拡大が進められているところ でございます。

●質問

・保険証の一体化だけでもこれだけの問題が出ているのに、今度は運転免許証や社会保障・税・災害以外の分野も対象を広げるということです。情報漏洩、トラブルの危険性はさらに高まります。

・マイナカードの有無で差別・不利益が生じる例が出ています。昨年12月、岡山県備前市で教育長が「園児及びその世帯がマイナンバーカードを取得している場合、申請により保育料が納付免除となります」とした通知を保護者に送付し、マイナカードの有無で保育・教育に差別するという事例が発生しました。これに対して岡山弁護士会は「本施策は、本来、公平でなければならない教育や行政サービスに対して、・・合理的理由のない差別を持ち込むことになり、憲法14条の平等の原則に反するもの」と述べています。

  • はないのか?

◎答弁

マイナンバーカードにつきましては、行政手続における本人確認で利用することがございますが、カードを取得していない方でも、運転免許証やパスポートなどにより本人確認ができるものでございます。

●質問

・政府がやっていたマイナポイント自体、差別・不利益を生んでいます。また、カードを持たない方は、毎年の申請が必要だったり、一人暮らしの高齢者、要介護者の方の医療を受ける権利が侵害されたり、医療機関や高齢者施設での相当量の事務、負担を生じることこそ、マイナンバーカードによる差別・不利益そのものです。

・さらに、岡山弁護士会、自由法曹団が述べているように、そもそもカードの取得は任意であるのに、健康保険証を廃止してマイナカードに一体化することは、「マイナンバーカードの取得を事実上強制する」ことであり、「憲法13条に基づく自己情報コントロール権の下、マイナンバーカードに情報が集約されるのを拒否する自由」の侵害です。

  • このようにマイナカードと健康保険証の一体化は、国民の医療を受ける権利すら損なうものであり、マイナカードの強制は、国民のプライバシー権、自己決定権を大きく侵害するものでは?

◎答弁

マイナンバーカードにつきましては、国が方針等に基づいて普及を進めているものでございまして、市民の申請に基づき交付されるものでございます。

(意見・要望)

・以上のように、健康保険証を廃止してマイナカードに保険証を一体化することは、医療機関、高齢者施設に対しては、多くのトラブルを引き起こし、膨大な負担を負わすものです。市民に対しては、特に高齢・障碍者に対して、医療を受ける権利を侵害する恐れがあり、国や保険者の保険証交付義務をないがしろにし、国民皆保険制度を崩す危険があります。さらに、マイナカードの有無によって差別・不利益を生じさせ、憲法14条の「平等の原則」、憲法13条に基づく国民のプライバシー権、自己決定権を大きく侵害するものです。

・要望ですが、市から国に対して数々のトラブルの原因の究明と再発防止が図られるまではマイナカードによる「保険証」運用の中止を求めるべきです。さらに来年秋の健康保険証の廃止は撤回することを求め、質問を終わります。