むねた裕之
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川崎市のコロナ医療提供体制―重症病床使用率8割と逼迫、原因は医療体制の脆弱性に

6月10日、川崎市第2回定例会で日本共産党を代表し片柳議員が代表質問を行いました。その中の「コロナ感染防止、医療提供体制について」の質疑を紹介します。

●質問

重症病床使用率は80%と激増、重症病床をなぜ、増やせないのか?

新型コロナ感染防止対策についてです。

市の医療提供体制について、市長に伺います。

 川崎市の新型コロナ感染者数は、5/30時点で人口10万人当たりでは新規感染者数24.5人、ステージ4の一歩手前、緊急事態宣言が出ている大阪、京都、兵庫よりも高い状況です。コロナ病床使用率は45%で東京よりも高く、特に重症病床使用率は80%と激増。全国では沖縄に次いで高く全国で最も重症病床が逼迫した都市の一つであり、119番通報しても入院調整できない事態が多発した1月中旬と同様の状況になりました。重症病床についてですが、市は病床について「広域的な運用で対応する」ということですが、「直近で病状が適合する病院に搬送する」ことが原則です。それにもかかわらず市内の重症病床は12月から30床のままです。なぜ、増やせないのか、伺います。重症化リスクの高いアルファ株の検出率は92%と従来株から変異株にほぼ置き換わっており、デルタ株も入ってきています。デルタ株や新たな変異株に対するゲノム検査も実施するべきです、伺います。

入院率(療養者の中の入院者の比率)16%全国最低レベルで、8割以上が入院できず

入院率についてです。

入院率とは、すべての療養者に占める入院できている人の割合です。本来は入院する必要があるのに入院できずに自宅や施設で療養する人が増えることから、入院率が低いほど、受け入れることができない患者が増えている、つまり医療がひっ迫している可能性があることになります。川崎市の入院率は16%で療養者の8割以上の感染者が入院できていないという状況です。緊急事態宣言下の自治体で全国最低の北海道の次に低い、異常な値となっています。神奈川モデルのスコアで判定しているといいますが、同じスコアを使っている相模原市は5/27時点で入院率43%です。いったいどうして川崎市は、こんなに入院できない状況なのか、伺います。スコア5点が入院すべき目安ですが、5点とは高齢者で持病を1つでも持っている方は対象になります。高齢者で持病を持っている方はとにかく入院措置をすべきです。伺います。

自宅療養者が激増し、全県の7割が川崎の自宅療養者

自宅療養者についてです。 

8割の療養者が入院できていない結果、自宅療養者が激増しています。5/24時点で自宅療養者数は770人、1か月で約2倍となり、全県の7割を占めています。自宅療養では、急激に状態が悪化した場合対応できませんし、家庭内感染が増えている現在、感染を抑えるためには自宅療養者をできるだけ少なくすることが必要です。自宅療養をできるだけ減らすためにも、入院させるか、せめて看護師が常駐している宿泊療養施設へ、迅速に保護すべきです、伺います。市内の宿泊療養者数は211人ですが、宿泊療養施設は302床、1か所のみです。宿泊療養施設をさらに確保すべきです、伺います。

●答弁

はじめに、新型コロナウイルス感染症重症病床につきましては、主に集中治療室等が充てられておりますが、新型コロナ以外の重症傷病者の治療二ーズも絶えずあることから、通常の地域医療とのバランスを慎重に見極めながら、病床確保並びに運用を行う必要があると考ております。

広域的な病床確保・運用を行う「神奈川モデル」では、重症病床については最大199床まで増床されたところであり、加えて、市内の一部の中等症患者受入れを担う重点医療機関において、重症化した患者については、可能な範囲で自院での入院加療を継続していただいており、重症病床数には表れないものの、実質的な重症者の受入れ枠を増やすなど、本市独自の取組も進めているところでございます。

今後におきましても、県と連携を図りながら医療提供体制の充実と適切な運用に努めてまいりたいと存じます。

次に、変異株についてでございますが、本市におきましては、健康安全研究所にて、変異株のスクリーニング検査を実施しJ昜性になった検体を、ゲノム解析を行うために国へ送付しているところでございます。

解析結果は、患者の療養や疫学調査のためにも、必要な情報であることから、より迅速に結果を得られるよう、本市においても実施に向けて準備を進めているところでございます。

次に、入院率につきましては、無症状者らも含む療養中の感染者数に対する入院者数の割合を表す指標でございまして、「神奈川モデル」での入院者につきましては、患者個々の年齢や症状、既往症等をスコア化し、入院適用の目安とした上で医師が適宜入院の要否を判断しております。

そうしたしくみであることから、高齢者などの重症化リスクの高い患者が多い場合は入院者数が増えるなど、算定時点の患者の年齢構成等の違いにより、県内各都市における入院率も異なっているものと考えております。

このような中、本市の現状といたしましては、入院が必要と医師が判断した方は、全員入院しているところでございます。

●再質問

 重症病床について、「なぜ、増やさなかったのか」という質問に対して、「神奈川モデルで最大199床まで増床された」という答弁でした。しかし、いかに県内で増やしたからと言っても重症患者については「直近で症状が適合する病院に搬送する」が原則です。県内にあるからよいということにはなりません。さらに「中等症患者受け入れ病院で、重症化した場合は、そのまま入院加療を継続する」という答弁でした。しかし、「重症病床を増やせない理由として、ICUなどの設備がないから」と回答していたではありませんか。このようなICUなど設備がない病院でそのまま重症患者を診ることは適切な対応なのか、伺います。

現在、重症病床の使用率が8割と逼迫した状況で、さらに幸区の高齢者施設のクラスターで多数の感染者と重症患者が出ていますが、重症患者を市内の重症病床で対応できない事態が生まれているのか、伺います。

 入院率についてです。「なぜ、川崎市はこんなに入院できない状況なのか」という質問に対して、「神奈川モデルでスコア化して判断する」「高齢者など年齢構成の違いによって各都市で異なる」という答弁でした。しかし、同じスコアで判断しているのに川崎市16%、相模原市は43%です。相模原市は川崎市の3倍の高齢者が感染しているということなのか、または川崎市は入院の目安を厳しくしているのか、伺います。

●答弁

「神奈川モデル」における確保病床については、当初から重症者も含めて市域に捉われずに、受け入れ可能かつより近い病院への相互受け入れを想定し、広域的な病床確保及び運用を行っているところでございます。

なお、これまでは市内重症者について市外搬送を行った事例はありませんが、市外重症者を受け入れた事例は複数ございます。

また、一部の市内重点医療機関において自院で重症化した患者の入院力口療を継続することにつきましては、患者の症状等を踏まえ、可能な範囲での対応として行うものであり、これまで他の病院に転院が必要になった事例はございません。

次に、現時点におきましては、市内で発生した重症者で、入院を希望する方は全員、市内病床にて受け入れているところでございます。

また、現在まで入院適用の目安については、県下一律で運用しております。なお、5月27日における新規感染者数のうち、60代以上の占める割合は、本市の17.2%に対し、相模原市は32.4%であり、算定時点の患者の年齢構成等が入院率に影響しているものと考えておりま

す。

●最終意見

人口当たりの病床数、医師数、ICU 設置数など政令市で最低レベル

 川崎市の医療提供体制について、コロナ病床使用率が高く、重症病床は8割と満床に近く逼迫した状況にあること。入院率が異常に低く、感染しても入院できない方が8割以上いるなど、緊急事態宣言下の都道府県と比べても医療体制の逼迫度合いが高いことが明らかになりました。この根本的な原因は、川崎市の医療体制が脆弱なことにあります。人口当たりの病床数は、政令市の中でワースト2位、医師の数はワースト3位、ICUの設置数もワースト4位、保健所の職員数も、人口当たりで横浜市の半分など、医療体制のどれをとっても川崎市は政令市で最低レベルです。この脆弱性が、コロナ感染者が増えるとすぐに医療が逼迫する最大の原因となっています。市内の医療提供体制の抜本的な強化を求めます。