むねた裕之
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川崎市24年度予算案-財政力はトップなのに「市民にとって不公平な予算」

2月28日、日本共産党の代表質問で、むねた市議団長が「24年度予算の特徴について」質疑をしましたので、紹介します。

●質問

新年度予算の特徴についてです。

新年度一般会計予算の規模は、前年度比40億円増の8712億円で、市税収入は、前年度比43億円増の3854億円で3年連続、過去最大です。これは、法人市民税が17億円増、固定資産税11億円増などによるものです。個人市民税は前年度並みですが、これは国の定額減税の影響で、地方特例交付金で97億円補填されるため、本来の個人市民税は100億円増、市税収入は140億円の増となります。

財政力指数は、政令市トップで、新年度は普通交付税・不交付団体となる見込みです。財政健全化指標は、すべて基準値を下回っており、極めて優良。一人当たりの市債残高は、政令市の平均よりも13万円低く、借金の負担額が少ないのが特徴です。川崎市の人口増加率、生産年齢人口割合ともに他の政令市と比較すると高く、人口推計でも今後6年間は増加を続けるため市税収入の増加は今後6年間続くと予想されます。ふるさと納税による減収はありますが、このように、市税収入、財政力指数、財政健全化指標のどれをとっても、川崎市は政令市でトップクラスの財政力を持っています。

収支についてです。

新年度予算の収支は―157億円としています。しかし、21年度予算では286億円の収支不足が出るとしていましたが、決算では60億円のプラス。22年度予算では239億円の収支不足が出るとしていましたが、決算では19億円のプラスとなりました。コロナ過でも収支はプラスであり、コロナが明けて個人市民税、法人市民税などが増加を見込まれるときに、どうして新年度の収支は―157億円も出るのか、伺います。

減債基金についてです。

減債基金残高は、一般会計分でみると積立額498億円、取崩額314億円で2955億円となり、一人当たりの残高は政令市平均の1.6倍にもなります。政令市の減債基金残高は、取崩額の平均4年分ですが、本市は約9年分にもなり、他都市と比べて極めて多い残高となっています。24年度の借入総額は804億円の見込みですが、減債基金の残高から差し引いた実質残高は約2151億円です。この金額は、取崩額の4年分という他政令市平均と比較すると約900億円も多いという状況です。現状でも他都市よりも多い900億円は市民の暮らしのために使うべきです、市長に伺います。

社会保障費についてです。

この間、市長は社会保障費の増大を「財政が厳しい」理由の一つとして挙げてきました。社会保障費である扶助費は、前年度比87億円増ですが、これは児童手当や障害福祉サービスの増によるもので、どうしても必要な費用であり、増加した部分のほとんどは国や県からの補助から賄われます。扶助費の一般財源の比率である経常収支比率は22年度決算では19.2%にすぎず、この間、ほとんど変化はなく、扶助費は増えていません。しかも、一人当たりの扶助費の額は引き続き政令市平均を下回っており、福祉予算である民生費も1人当たりにすると政令市平均よりも約2万円低い状況です。扶助費が増えることを理由に「財政が厳しい」とするべきではないと思いますが、市長に伺います。

臨海部の大規模事業についてです。

24年度予算の臨海部関連の予算についてですが、港湾費は一般会計、特別会計合わせて183億円、臨海部国際戦略本部の予算20億円が計上されています。この中には、臨港道路東扇島水江町線整備に37億円、コンテナターミナル整備事業に11億円、東扇島堀込部土地造成事業23億円、JFE撤退した跡地利用のための土地利用転換に5億円など臨海部の大規模事業に約91億円、補正も合わせると120億円が計上されています。中小企業などの予算と比べても臨海部の大規模事業には湯水のように使われています。

この中には市民にとって不要不急の事業も多数含まれています。特に臨港道路東扇島水江町線は、必要だとする根拠であったコンテナ取扱量は目標40万TEUの半分もいかず、事業費は当初の3倍、約1500億円にも跳ね上がっており、不要不急の事業となっています。このような市民にとって不要不急の大規模事業は中止・凍結をして、今一番必要な防災の予算に振り向けるべきです、市長に伺います。

◎答弁

減債基金への積立てにつきましては、市債の償還そのものであり、残高の多寡にかかわらず当然に行うべきものでございまして、国のルールどおりに計画的に行っているところでございます。

仮に、ルールどおり積み立てを行わない場合には、将来的に償還財源を確保することが困難となり、必要な施策を進めていくための財源が不足し、結果として市民の皆様に過度な負担を強いる懸念が生じるものでございます。

次に、社会保障費につきましては、質の高い保育・幼児教育の推進や児童家庭支援体制の強化、高齢者・障者施策などにしっかりと取り組んでおり、令和6年度予 算における扶助費は約2,383億円で、前年度に比べ 3.8%増加しているところでございます。 また、毎年度の決算におきましても、扶助費に係る市 民一人当たりの一般財源は、指定都市平均を上回っており、社会保障施策に的確に対応している一方で、本市の財政運営に与える影響は大きいものと考えております。

次に、臨海部における取組につきましては、川崎の優れたポテンシャルを活かし、大規模な士地利用転換への的確な対応や、成長が見込まれる分野の産業振興などにより、市内経済を活性化し、税源酒養を図る取組として積極的に進めているものでございまして、市民の皆様の安全.安心な暮らしを支えるためにも、重要なものと考えているところでございます。

減債基金からの借入れについての御質問でございますが、令和6年度における減債基金からの新規借入額は、物価の高騰が続く中で、退職手当等の人件費の増や、子育て施策・障害者施策に係る扶助費の増などにより、歳出の増が市税等の歳入の増を上回ったことから、前年度の当初予算と比較して、 37億円多い157億円となったところでございます。

●再質問

社会保障費について、「扶助費は他政令市平均を上回っている」、「前年度に比べて増加している」という答弁でしたが、市負担分の割合である経常収支比率は、増加していませんし、社会保障費である民生費では、平均以下です。財政力がトップで一人当たりの個人市民税が他都市よりも3万円も多いのに、扶助費は平均並み、民生費は2万円少ないのでは、市民はとても納得できません。まして「財政が厳しい」という理由にすべきではありません。

収支不足についてですが、「21年度、22年度はプラスなのに、どうして―157億円もの赤字なのか」という質問に対して、「前年度、23年度予算と比較した結果」という答弁でした。23年度の予算は、22年度予算をベースに作っていますが、その予算と決算を比べると、市税収入は111億円の増、歳出は279億円の減となっており、予算の収支不足は約300億円近くも過大に算出していました。そのような22年度予算をベースにして作られた23年度、24年度予算は、全く実態とかけ離れているという認識はないのか、市長に伺います。 

◎答弁

予算編成におきましては、収支フレームを基本としながら、様々な社会経済状況の変化にも的確に対応するための予算を編成しており、その時点で見込まれる歳出が 歳入を上回る場合には、減債基金からの借入により対応しつつ、執行段階におきましても、事業手法の効率化や、 歳入確保などに継続的に取り組み、借入額の縮減を図ってまいりました。

令和6年度予算につきましても、物価高騰や、国の施 策への着実な対応など、財政需要の拡大が見込まれる中 で、税収増につながる賃金の上昇が、物価の上昇に追いついていないことから、歳出の増加が歳入の増加を上回り、収支不足が拡大したところでございますが、引き続 き、借入額の縮減にしっかりと取り組み、「必要な施策、事業の着実な推進」と「持続可能な財政基盤の構築」の両立を進めてまいります。

●最後の意見

市税収入は過去最大、財政力はトップなのに、社会保障費は平均以下、子ども医療費などは県内最低、特養ホームは一切新設せず、防災についても耐震補強には応えない冷たい予算となっています。一方で、臨海部の一企業の撤退による跡地利用、不要不急の大規模事業には2000億円も支出するなど、市民にとって、きわめて不公平な予算となっています。 しかし、わが党が提案しているように、政令市トップの財政力を使い、他都市の1.6倍もある減債基金への積立金を減らして市民のために使えば、日本トップクラスの福祉施策が実現できます。また、臨海部のJFE跡地は、水素戦略ではなく、太陽光発電を中心にして、再エネ、省エネの企業を誘致し、再エネ・省エネの生産・供給拠点にすれば、日本の大都市として初めて、再生可能エネルギーでの自給自足を実現するモデル都市となります。このように川崎市は大きな可能性を持っていることを指摘して、あとは委員会に譲り、質問を終わります。