むねた裕之
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ぜん息患者医療費助成制度を廃止―「公平性」など廃止する根拠は何一つない

6月22日、川崎市議会6月議会で日本共産党は、「ぜん息患者医療費助成制度を廃止する条例について」代表質問を行いましたので、その質疑を紹介します。

(下線部は質問です)

●(初回質問)

パブリックコメントについてです。

川崎市は、その方針案に対するパブリックコメントを実施し、その結果を発表しましたが、患者会、関連団体からは「何のためのパブコメか」など非難の声が上がっています。パブコメの結果は、意見件数の約99.9%に当たる3347件が反対の趣旨でしたが、市側は、5月31日の記者会見で反対意見について「参考とするものではない」と説明。6月5日には市長も「パブコメは賛否を問うものではない」とあくまでも制度の廃止を強行しようとしています。反対がどんなに多くても方針を変えないということではパブコメの意味がないのではないか、市長に伺います。市民の意見を「参考にしない」とは、まったく市民の声を無視した態度ではないのか、市長に伺います。

制度廃止の根拠についてです。

市は、成人ぜん息患者医療費助成制度と小児ぜんそく患者医療費支給制度の廃止の理由について、①他のアレルギー疾患との公平性、②有病率が高くないこと、③死亡者数の減少、④国のアレルギー疾患対策基本法などを挙げています。

他のアレルギー疾患との公平性についてです。

厚労省喘息死ゼロ作戦評価委員会の報告では、重篤な発作による窒息死に至る時間は「一時間以内に13.6%、3時間以内と合わせると29.7%と急死が多い」として、ぜん息は死に至る疾患であり、長期の日常的な医療、管理が必要としています。本市も制度発足時の健康福祉委員会での質疑で、当時の医務官は「適切に治療しなければ、慢性化、死亡を伴う」こと、他のアレルギー疾患と比べて「特に就労と死亡という経済的損失に着目して」制度を必要とした。つまり、公平性についても当時、十分検討された結果、制度が必要と判断したのです。

さらに、日常的な医療、管理のために、毎月の通院と毎日の吸入が必要で、医療費は1割負担でも月6000ほどかかります。また、「気管支喘息」は、慢性で長期にわたって命を脅かし、高額の医療費がかかることから、アレルギー疾患では唯一、小児慢性特定疾病に指定されています。このように、ぜん息は他のアレルギー疾患とは違い、特別の対応・支援がないと死に至る疾患であるという認識はあるのか、市長に伺います。長期にわたる毎日の治療、高額の医療費、死に至る疾患という点で、他のアレルギー疾患と全く違うのに、横並びの対応しかしないことこそ、公平性に欠けるのではないのか、市長に伺います。

有病率についてです。

 市は、公害健康被害予防事業の助成対象地域の有病率8.1%と比べて、川崎市の8は高くはないことを廃止の理由にしています。しかし、助成対象地域とは「著しい大気の汚染が生じ、その影響により気管支喘息等の疾病が多発している地域」であり、これと比べて同程度というのは、廃止の理由にはなりません。市がパブコメで示した同じ研究報告では、20-79歳の成人ぜん息の全国平均の有病率は4.2であり、川崎市はこの2倍です。また、成人ぜん息の受給者数は制定時の1,770人から2021年の8,611人へと5倍に急増しています。このように有病率からみても、川崎市は大気汚染の著しい地域で喘息が多発している地域であり、患者数も急増していることから、制度の必要な地域とみるべきです。有病率8%というのは、むしろ制度の必要性の根拠にすべきであり、廃止の根拠にすべきではありません、市長に伺います。

死亡者数の減少についてです。

市は、死亡者数の減少を廃止の理由にしています。気管支ぜん息受給者数は制度制定時と比べて約5倍に急増している中でも、死亡者数は21人から8人へと1/3に減少しています。これは、明らかに本制度の効果です。しかし、市の地域医療審議会でも市が制度廃止の見直し案を検討する際にも本制度の効果の検証は何もしていません。死亡者数の減少は、制度の効果、必要性の根拠であり、廃止の根拠にすべきではありません、市長に伺います。制度の廃止を言う前に、効果の検証を行うべきです、市長に伺います。

国の基本法についてです。

市は、「国のアレルギー疾患対策基本法にそぐわない」として、基本法を制度廃止の理由としています。しかし、基本法第5条では、地方公共団体の責務として「地方公共団体は自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じた政策を策定し、実施するよう努めなければない」としています。本市は、国が大気汚染が深刻で、喘息が多発していると指定した地域であり、基本法にのっとればその特性に応じた対策を実施しなければならない自治体のはずです。国の基本法においても、自治体として対策を実施する責務があるのではないですか、市長に伺います。基本法を制度廃止の根拠にしてはならず、むしろ制度存続の根拠にすべきです、市長に伺います。

◎答弁

アレルギー疾患対策は、国や地方自治体、関係団体、そして国民が、基本法の精神と制度的な枠組みのもと、基本指針に従って、進めていくことが求められています。

本市といたしましても、今回策定したアレルギー疾患 対策推進方針のもと、この方向性に則って、アレルギー疾患全般に対して、総合的な対策を主体的に進めていく必要があると考えております。

制度.の見直しにつきましては、アレルギー疾患対策を取り巻く状況の変化やこれまでの庁内での検討を踏まえ、 これからのアレルギー疾患対策としては、地域医療審議会の答申を尊重し、他のアレルギー疾患との公平性の観点から、特定の疾患に医療費を助成し続けることは困難であると判断したものでございます。

さらに、本市を含め、全国的に、標準治療の普及等により、気管支ぜん息を死因の死亡者が減少するなか、多くのぜん息患者がいらっしゃることを鑑みれば、啓発等による発症・重症化予防に重点をおいた施策に転換する必要があると考えております。

また、今回、制度の維持を求める多くの声をいただいたことについて、パブリックコメント手続条例に基づき、本市の考え方を丁寧に取りまとめさせていただいたところであり、今後、助成制度の受給者に対しましても、丁寧な 対応を行ってまいりたいと存じます。

●(再質問)

ぜん息患者医療費助成制度について市長に伺います。          【市長】

公平性についてです。

 他のアレルギー疾患と全く違うことを示し、横並びの対応こそ公平性に欠けるのでは、という質問に対して、「公平性の観点から、特別な助成は困難」という答弁でした。しかし、ぜん息は、長期に毎月の通院と毎日の吸入が必要で、医療費は1割負担でも月6000円もかかり、発作が起こると3割が急死する疾患です。明らかに他のアレルギー疾患とは違うのです。

長年、ぜん息患者を診ている関川医師は公平性について、「公平性とは、必要な方に必要な医療、援助を届けることであり、単純な横並びということではないはずです。中断リスクの高い患者、重症化リスクの高い患者、経済的困難のある患者などには特に意識的に支援を行ってこそ、公平な施策といえるものです」と述べています。公平性と言うのなら、だれもが医療を受けられることこそ公平ではないですか、市長に伺います。

受診抑制についてです。

啓発により発症・重症化予防する」という答弁もありましたが、ぜん息は、啓発による予防では発症・重症化は防げません。ぜん息は、制度があるからこそ、長期に日常的な治療が続けられ、発症・重症化を防いでいるのです。この答弁は、制度がなくなれば受診抑制が起こることを全く理解していないものです。新聞報道でも患者の方が「制度があるから病院に通え、症状も落ち着いている」「ぜん息の薬は高い。3割になると通院を控えてしまう」という声を紹介しています。6月1日の健康福祉委員会で環境保健担当の課長は「受診を控えることになりかねないことは否定しない」と答弁しており、受診抑制を認めています。医療費が3倍にもなったら、受診抑制が起こる可能性は極めて高いのではないのか、市長に伺います。受診抑制が起これば、患者の命を危険にさらすことになるのではないのか、市長に伺います。

パブコメについてです。

 反対が多くても方針を変えないことに対して、「パブコメの意味がない」「市民の声を無視した態度では」という質問に対して、「丁寧に対応していく」という答弁でした。9割が反対なのに、「参考にしない」「賛否を問うものではない」として制度廃止を強行する、これのどこが「丁寧な対応」ですか、市長に伺います。

◎答弁

はじめに、制度の見直しにつきましては、公平性の観点から、特定の疾患に対して医療費を助成し続けることは 困難と判断したものでございます。

次に、発症・重症化予防にっきましては、アレルギー疾患は、生活環境に関わる多様で複合的な要因が発症及び 重症化に関わっており、インターネット等において、原因や予防法、症状の軽減に関する膨大な情報が溢れていることから、適切な情報が得られず、若しくは適切でない情 報を選択したがゆえに、科学的知見に基づく治療から逸脱し、症状が再燃または増悪する例が指摘されています。

このため、発症・重症化予防に向けて、正しい知識と適 切な情報を得るとともに、科学的知見に基づく良質かつ適正な医療を受けることも重要であることから、患者の 皆様には、引き続き医師の指示のもとで、必要な治療を継 続していただくよう、丁寧な対応を行ってまいりたいと 存じます。

次に、パブリックコメント手続につきましては、市民の市政への参加を推進するとともに、行政運営の透明性の 向上を図ることを目的としており、賛否を問うものでは ございません。様々な御意見に対して、十分に考慮した上 で、市の考え方を丁寧に回答させていただいたところでございます。

●(再々質問)

ぜん息患者医療費助成制度についてです。            【市長】

公平性についてです。

 「公平性と言うのなら、だれもが医療を受けられることこそ公平ではないですか」という質問に対して、最初の答弁と全く同じものでした。いろんな角度から「公平性は制度廃止の根拠にはならない」と質問したのに、一つも答えていません。結局「他のアレルギー疾患との公平性」という根拠は示されなかったということです。

他の廃止の根拠についてです。

市は制度廃止の理由について、公平性のほかに有病率、死亡者数、基本法を挙げていましたが、「これらはむしろ制度存続の根拠であり、廃止の理由にならない」という質問に対しても、反論はありませんでした。以上のことから廃止の根拠は何一つないのではないですか、市長に伺います。

財政の問題についてです。

 答弁では「特定の疾患に医療費を助成し続けることは困難」と財政の問題にも言及しています。市は、この制度廃止により3億7000万円削減できますが、一方でJFE跡地利用のためには数千億円もの投資をするということです。JFE撤退の後始末のためには2000億円支出しておきながら、わずか4億円の「医療費助成は困難」と言って、ぜん息患者の命綱である制度を廃止する、いったい誰のための市政なのか、市長に伺います。

◎答弁

先ほどお答えしたとおり、制度の見直しにつきましては、アレルギー疾患対策を取り巻く状況の変化やこれま での庁内での検討を踏まえ、これからのアレルギー疾患 対策としては、地域医療審議会の答申を尊重し、他のアレ ルギー疾患との公平性の観点から、特定の疾患に医療費を助成し続けることは困難であると判断したものでございます。