川崎市予算ー財政力トップなのに福祉・くらしの予算は平均以下
23年度3月川崎市議会の日本共産党・代表質問で、むねた裕之市議団長が質疑を行いましたが、その内容をお知らせします。
●質問
新年度予算の規模と特徴についてです。
新年度一般会計予算の規模は、前年度比112億円減の8673億円。この減額は本庁舎等建替え事業や橘処理センター整備事業などの市債の減によるものです。市税収入は、前年度比141億円増の3812億円で過去最大。これは個人市民税が63億円増、法人市民税が38億円増、固定資産税31億円増などによるものです。財政力指数は、政令市トップで、新年度は普通交付税・不交付団体となる見込みです。財政健全化指標は、すべて基準値を下回っており、極めて優良。直近の2021年度決算において他の政令市と比較すると、一人当たりの市債残高は、政令市の平均よりも12万円低く、借金の負担額が少ないのが特徴です。川崎市の人口増加率、生産年齢人口割合ともに政令市で最も高く、人口推計でも今後7年間は増加を続けるため市税収入の増加は今後7年間続くと予想されます。このように、市税収入、財政力指数、財政健全化指標のどれをとっても、川崎市は政令市でトップクラスの財政力を持っています。
減債基金についてです。
減債基金残高は、一般会計分でみると積立額450億円、取崩額211億円で239億円も積み増しをして2772億円となり、一人当たりの残高は政令市平均の1.6倍にもなります。政令市の減債基金残高は、取崩額の平均4年分ですが、本市は約9年分にもなり、他都市と比べて極めて多い残高となっています。23年度の借入総額は841億円の見込みですが、減債基金の残高から差し引いた実質残高は約1931億円です。この金額は、取崩額の4年分という他政令市平均と比較すると約650億円多い残高となります。さらに減債基金残高は、毎年100億円以上積み増しされて5年後には約3400億円となり川崎市の市税収入と同じ規模となり、政令市平均よりも1200億円以上も多くなります。借入額を差し引いた実質残高でも他都市と比べて極めて多いわけですから、減債基金からの借入を理由に「財政が厳しい」とは言えないと思いますが、市長に伺います。現在、新型コロナや40年ぶりの物価高騰など非常時なのですから、毎年約450億円前後の積立額を減らし、コロナ対策、福祉・暮らし、防災のために使うべきです、市長に伺います。せめて、新年度の積み増し分239億円を緊急のコロナ、物価高騰対策のために使うべきです、市長に伺います。
社会保障費と個人市民税についてです。
この間、市は「財政が厳しい」という理由の一つに社会保障費の増額をあげてきました。確かに社会保障費である扶助費は、前年度比28億円増ですが、これは小児医療費助成制度や出産子育て応援事業費、障害福祉サービスなど、どうしても必要な費用であり、増加した部分のほとんどは国や県からの補助から賄われるので、扶助費の一般財源の比率である経常収支比率は21年度決算では19.5%にすぎません。この比率は5年前と比べてもほとんど変わらず、扶助費の市負担割合は増えていません。しかも、一人当たりの扶助費の額は引き続き政令市平均を下回っており、福祉予算である民生費も1人当たりにすると政令市平均よりも約1万円低い状況です。一方、一人当たりの個人市民税は、政令市平均より約3万円高く、政令市トップです。個人市民税は政令市で最も高いのに、その税収が福祉・暮らしには十分還元されていないのが川崎市の特徴です。これでもなお、社会保障費を「財政が厳しい」理由とするのか、市長に伺います。
◎答弁
減債基金への積立てにつきましては、世代間の公平を図るために、市債の満期一括償還に備えて計画的に行っている償還そのものであり、この減債基金から新規借入れを行わざるを得ない状況こそが、厳しい財政状況であることを示していると老えております。
また、待機児童対策や、高齢者・障害者施策などの社会保障関連経費は引き続き増大しており、扶助費 係る市民一人当たりの一般財源は指定都市平均を上回っているところでございまして、本市の財政運営に与える 影響は大きいものと考えております。
●再質問
新年度予算の規模と特徴についてです。 【市長】
減債基金残高が他都市よりも650億円も多く、「財政が厳しいとは言えないのでは」という質問に対して、「減債基金から新規に借り入れざるを得ないから厳しい」という答弁でした。しかし、新年度の収支不足額じたいに問題があります。
収支不足額についてです。
昨年の決算議会では、市は21年度予算で286億円の収支不足が出るとしていましたが、決算では60億円のプラスとなりました。収支不足をなんと300億円以上も過大に試算していました。新年度予算では、収支は-120億円としています。しかし、昨年度が+60億円であり、収支フレームでも今年度、新年度と収支は改善するとされており、しかも、新年度は市税収入が今年度よりも141億円増となり、支出は本庁舎建替事業が減となるのです。どこに新年度収支が―120億円となる根拠があるのでしょうか。
収支フレームとの誤差についてですが、21年度では収支フレームと決算で300億円以上、新年度でも収支フレームと予算では100億円近い誤差となっています。これだけの誤差が出ている収支フレームをもとに「財政が厳しい」というべきではありません、市長に伺います。
◎答弁
収支フレームは、持続可能な行財政基盤の構築に向けた指針であり、本市の総合計画・実施計画や行財政改革プログラムの取組を反映して策定しているものでございます。 予算編成にあたりましては、収支フレームを基本としながら、様々な社会経済状況の変化等にも的確に対応 しているところでございまして、収支フレームとの差異につきましては、予算案とともにお示ししているところでございます。本市の財政状況につきましては、これまでの減債基金 からの借入額の累計が500億円を超えていることに加え、さらに新規借入れを計上せざるを得ない状況こそが、厳しい財政状況であることを示していると考えております。
●最終意見
中小企業支援についてです。
答弁では、「原油価格や物価高騰などの影響で、厳しい経営環境になる市内中小企業を資金繰り支援などにより下支えする」というものでした。資金繰り支援だけでは「下支え」はできません。給付金など直接的な支援も必要です。今後予定されている更なる電気・ガス料金の値上げなどに対し、市として独自の支援策を行うことを求めておきます。
学校給食費の無償化についてです。
教育長は、最高裁の判例を引用し、保護者負担を正当化しますが、この判例は、無償にすることが義務ではないと言っているだけです。国会で岸田首相が「自治体の判断を妨げない」と答弁しているように、他の自治体は独自の判断で無償化を実施しています。本市でも無償化に踏み出すことを求めておきます。
学習状況調査の結果についてです。
小学4年以降毎年の実施にして、その結果を「児童生徒の学習改善につなげる」「授業改善に生かす」と教育委員会が掲げているのですから、児童生徒も教育現場も平均点の向上を意識せざるを得なくなってしまいます。毎年の調査実施はやめるよう要望します。
新型コロナウイルス感染症対策についてです
高齢者施設への抗原検査キットの無料配布は「感染者数が落ち着いているから必要ない」との答弁でした。しかし、感染拡大してからの対応では遅く、5類移行後はいっそう自治体独自の対策が重要です。高齢者等ハイリスク者のいのちを守るうえで、検査体制、医療提供体制の強化を改めて求めておきます。
救急医療体制についてです。
「第7波・第8波の状況は、管轄区域や隣接の救急隊だけでは対応できない状況だったということが分かった」との答弁です。もちろんこの時点でも第2救急隊も出動していたのではありませんか。そうであれば、すぐにでも国基準に達していない救急隊5隊を増隊すべきです。
このように、新年度予算案は、市民の要望が強い学校給食費の無償化や、中小企業への直接支援には応えず、命に係わるぜん息患者医療費助成制度を廃止するなど、市民の命、暮らしには冷たい予算であり、JFE高炉休止による跡地利用など臨海部の大企業や大規模事業などには湯水のように使う予算となっています。そのことを指摘して、あとは委員会にゆずり、質問を終わります。