川崎市・決算―予算・286億円赤字としたのに決算・60億円黒字、財政力はトップ
9月13日、川崎市議会第4回定例会における日本共産党・代表質問で「決算の特徴について」取り上げたので、その質疑を紹介します。
●質問
2021年度決算の特徴について、市長に伺います。
2021年度一般会計決算では、収支は予算では大幅な赤字としていましたが、60億円の黒字となりました。歳入は前年度比1,117億円減の8,480億円となりましたが、これは前年度、国からの臨時特別給付金などで大幅な増額になっていためであり、コロナ前の19年度比で見ると1,000億円以上もの大幅な増額となっています。
市税収入は、3,646億円で予算額に対し38億円の増で、これは所得の増加に伴う個人市民税の増によるものです。財政力指数は、政令市で唯一、1を超え、基準財政収入額が需要額を上回っており、政令市トップを続けています。そのため、22年度は普通交付税の不交付団体となっています。財政健全化指標は、すべて基準値を下回っており、極めて優良。一人当たりの市債残高は、政令市の平均よりも12万円低く、借金の負担額が少ないのが特徴です。川崎市の人口増加率、生産年齢人口割合ともに政令市で最も高く、人口推計でも今後8年間は増加を続けるため市税収入の増加は今後8年間続くと予想されます。このように、市税収入、財政力指数、財政健全化指標のどれをとっても、川崎市は政令市でトップクラスの財政力を持っています。
収支フレームについてです。
21年度予算では286億円の収支不足が出るとしていましたが、決算では60億円のプラスとなりました。収支不足をなんと300億円以上も過大に試算していました。20年度についても予算では収支がマイナス120億円としていたものが決算ではプラスとなりました。わが党は、予算、決算議会で何度も収支不足額が過大であると主張してきましたが、その通りになりました。21年度の収支不足額ついて、なぜ、これだけの誤差が生じたのか、伺います。今後の収支について、22年度マイナス239億円、23年度マイナス206億円となっていますが、コロナ禍でも2年連続黒字となったのに、どうして今後200億円以上もの赤字となるのか、伺います。これだけの誤差が出ている収支フレームは、見直すべきです、市長に伺います。「令和3年度、一般会計・特別会計決算見込みの概要」からは「財政が厳しい」という文言が消えました。今後も過大な収支不足を理由に「財政が厳しい」というのはやめるべきです、市長に伺います。
減債基金についてです。
21年度予算では減債基金から286億円借入れる予定でしたが、決算では収支不足が出なかったために借入はゼロとなりました。減債基金残高は、一般会計分でみると積立額441億円、取崩額338億円で2,300億円となり、一人当たりの残高は政令市平均の1.6倍にもなります。政令市の減債基金残高は、取崩額の平均4年分ですが、本市の場合は9年分にもなります。減債基金からの借入が527億円ありますが、それを差し引いた実質残高は1,773億円ですが、取崩額4年分を差し引いても700億円以上も多く、他都市と比べて、極めて多い残高となっています。今後8年間、毎年200億円以上積み増しをして2028年度には3,371億円、今よりさらに1,000億円以上も残高が増えるのです。それ以降の返済額からみてもあまりにも多額の残高です。物価高騰など市民生活・中小企業の経営が大変になっている中で財政支援が必要な時に、今後の減債基金への積立額を今まで通り1,000億円以上も積み増しをするつもりなのか、市長に伺います。
社会保障費についてです。
社会保障費である扶助費は、国からの子育て世帯への臨時特別給付金などにより、前年度316億円の増となっていますが、これはほとんど全て国庫支出金から出されています。一人当たりの扶助費の額は引き続き政令市平均を下回っており、福祉予算である民生費も1人当たりにすると政令市平均よりも約1万円低い状況です。一方、一人当たりの個人市民税は、政令市平均より約3万円高く、政令市ではトップです。個人市民税は政令市で最も高いのに、その税収が福祉・暮らしには十分還元されていないのが特徴です。
コロナ関連事業費についてです。
一般財源からの市独自支出は64億円で、市民や事業者への独自支援は31億円のみです。中小企業への支援も融資の利子補給金が中心で、直接支援はまったくありません。新型コロナ感染防止のための支援では、PCR検査については、検査の継続やコールセンターへの支出はありますが、医療機関への財政支援については、独自支出はありません。雇止めや解雇が急増している非正規労働者への直接支援も、住居確保給付金のわずか5,400万円です。
しかし、21年夏はコロナが猛威を振るい、川崎市では人口当たりの陽性者数は東京をはるかに超え、重症病床使用率も100%を超え、陽性になっても入院できず3,000人以上の方が自宅で放置されるなど政令市で最悪の状況となったのに、財政支援は国や県待ちで市独自の医療機関への財政支援は全くと言っていいほどありませんでした。一方で、臨海部の不要不急の大規模事業に対しては、臨港道路東扇島水江町線整備に45億円、コンテナターミナル整備事業に15億円、東扇島堀込部土地造成事業に1億円など62億円が支出されています。まさに臨海部の大規模事業優遇の決算です。今後、コロナの収束はまだ見えず、物価高騰により市民生活は苦しさを増し、台風シーズンにより災害の危険性はさらに増します。この状況に対応するためにも、不要不急の大規模事業を削減し、減債基金への積立額を減らして、コロナ対策、福祉・くらし、防災のための財政支援を増やすべきです、市長に伺います。
◎答弁
はじめに、収支フレームについてでビざいますが、現在の収支フレームは、令和4年度当初予算をべースに、人口推計や経済指標等を活用しつつ、殊怠合計画第3期実施計画」や「行財政改革第3期プログラム」の取組を反映して、策定しているものでございますことから、収支フレームの改定につきましては、次期実施計画の策定とあわせて、想定される環境変化を適切に、反映させた上で行ってまいりたいと芳えております。
また、各年度の予算額と収支フレームとの差異につきましては、予算案とともにお示ししているところでございます。
次に、本市の財政状況についてでございますが、これまでの減債基金からの借入額の累計が500億円を超えていること、ま、た、収支フレームにおきましても新規借入れを計上せざるを得ない状況こそが、厳しい財政状況であるととを示していると考えております。
次に、減債、基金についてでございますが、減債基金への積立てにつきましては、世代間の公平を図るために、市債の満期一括償還に備えて計画的に行っている償還そのものであり、残高の多寡にかかわらず当然、に予算計上すべきものでございます。
このような中におきましても、市民の皆様の安全・安心な暮らしを支えるため、現下の喫緊の課題である感染症対策や物価高騰への対応をはじめ、社会保障や防災・減災対策などに取り組むとともに、都市拠点や交通基盤などの社会資本の計画的な整備につきましてもバランス良く推進しているところでございます。
●再質問
収支フレームについてです。
21年度の収支不足額について、「なぜ300億円以上もの誤差が出たのか」という質問に対して「市税や交付金の増による」という答弁でしたが、数百億という誤差の理由にはなっていません。「コロナ禍でも2年連続黒字となったのに、どうして今後、毎年200億円以上もの赤字が続くのか」という質問に対しても、「本庁舎建替えと橘処理センターなどの投資的経費の増」という答弁ですが、これだけで200億円もの赤字になる理由にはなりません。毎年、誤差が数百億円も出るような収支フレームでは、全く信頼できませんし、これをベースに来年度予算を立てることは間違いです。収支フレームの見直しについて「次期実施計画の策定に合わせて」という答弁でしたが、そうするとあと3年はこのままの収支フレームを使い、毎年度の予算もこれをベースにするわけです。早急に収支フレームの見直しをすべきです、市長に伺います。
減債基金についてです。
「過大な収支不足を理由に「財政が厳しい」というのはやめるべき」という質問に対して、「減債基金からの借入累計が500億円あるから厳しい」という答弁でした。しかし、それを差し引いた実質残高は1773億円で、他都市と比べても700億円以上も多く、厳しい理由にはなりません。また収支フレームで今後「新規借入するから厳しい」という答弁もありましたが、先ほど述べたように今後、200億円もの収支不足が続くとは考えられず、さらに毎年200億円以上も基金に積み増しをしていくのです。このように「減債基金からの借入」は「財政が厳しい」理由にはならないと思いますが、市長に伺います。
◎答弁
初めに収支フレームについてでございますが、収支フレームは、持続可能な行財政基盤の構築に向けた指針であり、本市の総合計画・実施計画や行財政改革プログラムの取組を反映して策定しているものでございますことから、今後も、実施計画の策定とあわせて改定を行ってまいりたいと考えております。
また、毎年度の予算編成にあたりましては、収支フレームを基本としながら、社会経済状況の変化等にも的確に対応してまいります。
次に、減債基金への積立てにつきましては、世代間の公平を図るために、市債の満期一括償還に備えて計画的に行っている償還そのものであり、この減債基金から借入れを行わざるを得ない状況こそが、厳しい財政状況であることを示していると考えております。