むねた裕之
むねた裕之むねた裕之

川崎市・脱炭素戦略―輸入水素頼みではなく、太陽光中心の再エネ供給の一大拠点に

12月8日、川崎市議会12月議会で行った日本共産党の代表質問の中から、「臨海部の脱炭素戦略について」の質疑を紹介します。

【質問】

臨海部の脱炭素戦略についてです。

 世界各地で、異常な豪雨、台風、猛暑、森林火災、干ばつ、海面上昇など気候危機と呼ぶべき非常事態が起こっています。国連IPCC「1.5度特別報告書」は、2030年までに大気中への温室効果ガスの排出を2010年比で45%削減し、2050年までに実質ゼロを達成できないと、世界の平均気温の上昇を1.5度までに抑え込むことができないことを明らかにし、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、国別の温室効果ガス排出削減目標を遅くとも2022年までに強化することが求められました。10年足らずの間に全世界のCO2排出を半分近くまで削減できるかどうか、ここに人類の未来がかかっています。

 川崎市は政令市最大のCO2排出地域であり、特に、CO2排出量の75%を占める臨海部の脱炭素戦略、CO2削減、再生可能エネルギーへの転換は喫緊の課題となっています。

CO2排出量の削減についてです。

環境局から「川崎市地球温暖化対策推進基本計画」案が出され、温室効果ガス排出量を「2050年までに実質ゼロを目指す」「2030年度までに2013年度比で50%削減する」という目標が示されました。計画では2018年度の排出量は2259万トンで、30年度までに1180万トン削減するとしています。排出量の産業系に占める割合は全国が48%なのに、川崎市は77%と極めて高く、この産業系のCO2排出量のほとんどが臨海部に集中しています。特にガス火力発電所5か所から排出される電力関連の排出量は、1600万トンと推計され、さらに鉄鋼関連から約900万トン、石油関連企業から約200万トンなど、電力、鉄鋼、石油関連企業から全市のおよそ7割が排出されています。計画では、CO2排出量の半分近くを占めるLNG燃料のガス火力発電所をいつまでに廃止するのか、伺います。その後、発電所ではどのような発電形態を考えているのか、伺います。

電力、鉄鋼、石油関連部門のCO2削減計画についてです。発電所など電力に関しては、水素発電に切り替えるとしていますが、30年までの削減目標、具体的な計画が書かれていません。鉄鋼、石油関連部門については、ほとんど具体的な目標も計画も書かれていません。市内のCO2排出量の7割を占めるこの3部門のCO2削減計画がないのは、大問題です。計画では、いったいどうやって、この3部門のCO2排出量を削減するのか、伺います。さらに臨海部の電力、鉄鋼、石油関連企業はわずか7社で構成されており、これら大規模事業所の脱炭素化は省エネにとって決定的です。全市的なCO2削減を進めるためにも、川崎市はこの3つの部門の大規模事業所7社とCO2削減目標や計画などの協定を結ぶべきです、伺います。

再生可能エネルギーについてです。

計画では、川崎市のエネルギー供給・調達について「CO2フリー水素等の海外からの調達」を掲げています。しかし、エネルギーを海外に依存するということは、安定したエネルギーが調達できないという危険を伴います。水素エネルギーを輸入するとしていますが、安定した供給元や輸送方法が確立されているのか、伺います。水素エネルギーについてですが、水素の生成には大量の電力を必要とします。その電力を再生可能エネルギーで生成したとしても、エネルギーロスが生まれ、船を使って輸入するとなるとさらなるCO2排出や膨大なエネルギーロスが生まれ、コストも高くなります。水素を発電エネルギーとして使うと、そのコストは東京電力の試算でも1キロワットアワー当たり97円となり太陽光と比べて10倍にもなります。この市の計画をすすめれば、供給が安定しない海外頼みのエネルギーを市民に10倍もの高い電気料金で負担させることになるのではないか、伺います。

一方、臨海部には再生可能エネルギーの大きな可能性があります。臨海部の電力、鉄鋼、石油関連の再編などで大規模な土地利用転換が予想されます。この土地をどう利用するかが喫緊の課題となってきます。どんな企業が来ても、その建物や駐車場の屋根に太陽光パネルを設置することは可能です。わが党が研究委託して試算した結果では、臨海部の敷地の60%に太陽光パネルを設置。風力発電も既存の風力発電所に陸上6か所、洋上12か所を加え、既存のバイオマス発電所を加えると2050年までには市内の産業部門、民生家庭部門の電力使用量の約7割を臨海部の再生可能エネルギーで賄えることが明らかになりました。再生可能エネルギーは輸入に頼らず、水素戦略一本ではなく、太陽光などを中心とした再生可能エネルギーを市内、特に臨海部から供給すべきです、市長に伺います。

【答弁】

臨海部のC02排出量の削減についての御質問でございますが、

本市臨海部には、国内外で幅広く事業展開している事業者が多く立地しており、そうした事業者が温室効果ガスの削減対策を進めるうえでは、国内外の関連する事業所の中で、エネルギー効率や設備の経過年数、新たな技術開発の動向などを勘案して、優先順位をつけるなど、計画的にC02排出削減に取り組んでいくものと老えております。

なお、臨海部で操業する発電事業者につきましては、市内のみならず、首都圏の市民生活や産業活動を支えるエネルギー供給という、広域的な役割を担っており、再エネ導入の目標やエネルギーの安定供給の観点などから、国全体のエネルギー構成を示したエネルギー基本計画に基づき、脱炭素化に向けた転換が進められるものと認識しております。

本市におきましては、地球温暖化対策の推進に関する条例に基づき、一定規模以上の事業者に対し、温室効果ガス削減計画を提出することを義務付け、また、毎年度、進捗状況について報告を受けておりますので、個々の事業者が本市の2050年温室効果ガス排出実質ゼロの方針に沿って、計画・取組を着実に進められるよう、指導・助言等を行うとともに、各企業が技術開発やイノベーションに取り組.みやすい環境を整備してまいります。

海外からのC02フリー水素の輸入等についての御質問でございますが、

はじめに、水素の供給元につきましては、中東やオアニア、東南アジアといった複数の地域を対象として、エネルギー関連企業等により、安定供給に向けた取組が進められているところでございます。また、水素の輸送方法につきましては、昨年度、川崎臨海部において実施した「国際間輸送による水素サプライチェーン構築実証」で用いられた、有機ハイドライド方式については、既に商用規模で実施可能であるほか、液化水素方式につきましても、現在、技術実証が進められていると伺っております。

次に、水素価格についてでございますが、大規模な発電設備への水素供給など、水素を大に消費する案件を創出することにより、スケールメリットによる水素の低減が図られるものと考えております。

臨海部の再生可能エネルギーについての御質問でございますが、

川崎臨海部におきましては、外洋に比べて風速が弱く、また高密度に士地を活用していることから、風力発電や大規模な太陽光発電の設置には地理的な制約があると考えております。更に、川崎臨海部は川崎市内のみならず、首都圏の市民生活や産業活動を支えるエネルギーを供給しております。

こうしたことを踏まえ、カーボンニュートラルな社会においても、川崎臨海部が首都圏における大規模なエネルギー供給拠点としてあり続けるため、安価かつ安定的にC02フリー水素を調達するなど、川崎臨海部の特性を活かした取組を進めてまいります。

【意見】

臨海部のCO2排出量の削減について

「事業者が取り組んでいくものと考えている」という答弁でした。しかし、市は「2030年までに50%削減する」としているのです。個々の事業者がおのおの決めて達成できる目標ではないはずです。また、首都圏、政令市で最大の排出量を出している都市だからこそ、重大な責任があるのです。各企業がやるからという他人事では、その責任は果たせません。市が主導してCO2排出量の7割を排出している電力、鉄鋼、石油関連の3部門、7企業に対して、削減目標、計画などが入った協定を結ぶことを要望します。

再生可能エネルギーについて

「安価かつ安定的にCO2フリー水素を調達する」という答弁でした。水素の配給元については「各企業が安定供給に向けた取り組みが進められている」ということですが、まだ、供給元も決まっておらず、プラント建設もこれから。今後各国が水素の取り合いになった場合、安定した供給が保証されるわけでもありません。輸送方法についても、まだ確立されておらず、実用化は2030年以降です。東電が出資するJERAの計画では、2050年でも水素をLNGに混ぜて使う計画でありCO2排出ゼロとはならず「ゼロエミッション2050」計画というのは完全に「看板に偽りあり」です。さらにこれらが解決したとしても、コストは太陽光発電と比べても数倍以上です。未確立な技術を期待した海外頼みの戦略では「安価で安定的」なエネルギーとはなりませんし、2030年までの再エネ転換は間に合いません。今ある技術を使い、臨海部の土地利用の大転換という機会を利用して、コストの安い太陽光などを中心とした再エネの自給は可能です。ぜひ、この方向での検討を要望します。