代表質問(臨港道路)-総事業費980億円の臨港道路を市長の独断で了承
2月26日、日本共産党を代表して宗田裕之が代表質問を行いました。臨港道路東扇島水江町線の整備事業についての質疑を紹介します。
◎質問
臨港道路東扇島水江町線整備事業についてです。
全長3キロメートル、事業費540億円(市費180億円)という、橋の長さも事業費規模も市内最大級の臨港道路東扇島水江町線。この事業について1月10日、国土交通省が事業再評価を発表し、川崎市に対しても報告がありました。
耐震設計などの見直しにより総事業費440億円増の980億円の事業変更
その内容は、「大規模地震の最新の知見を踏まえた耐震設計の見直し等のよる構造の強化、…現地着工後に判明した現場条件不一致による地盤改良の追加等により、事業費を440億円増加する見込み」というものです。大規模地震の最新の知見を踏まえた構造の強化のため132億円、被災後の復旧性を考慮した構造の変化により87億円、橋脚位置の変更に伴う構造・架設の変更に55億円、工事中の運河の航行安全対策の強化に22億円、企業活動を考慮した道路線形の見直し・構造変更で26億円、地盤改良等で18億円などです。市は事業内容の変更を2018年12月20日に国からの通知により確認したとのことです。
しかし、国の資料によれば、耐震設計の見直しは東日本大震災後の2014年からはじめ、2015年にはそれに基づいて工事着手を開始しています。
市は、事業変更(総事業費)の設計は2017年度から着手したと「国から伺っています」と答弁していますが、しかし、港湾局は2016年末に、事業を「延伸」するなど現行計画を見直し、完成が当初より5年遅れ、2023年完成予定と国が発表したとしているのです。この変更は国の変更を受けてのものだったのではないかと考えますが、港湾局の変更が何に基づいてなされたものなのか、伺います。
工事着手は15年度、事業変更は17年度からなのに市への報告はなかったのか?
工事着手は15年度から、事業変更(総事業費)の設計は17年度からすでに着手されていますから、当然、川崎市にも報告があったのではないかと思いますが、伺います。この事業は国直轄事業ですが、事業変更により、440億円もの事業費が増額となり、川崎市も3分の1を負担することになるわけですから、当然、事業変更にあたって、川崎市とも協議を行なったと思いますが、協議の日時、内容について伺います。
◎答弁(港湾局長)
本事業につきましては、国の直轄事業であることから、事業の進捗管理にあたり、事業評価監視委員会において 審議されるものでございまして、本市といたしましては、この審査結果などを、速やかに議会へ報告してきたところでございます。
また、国における、事業内容の変更は、東日本大震災を踏まえ、平成24年3月に道路橋示方書が改訂され、 耐震設計の見直しが必要となったことから、平成26年度から様々な視点による見直しをはじめ、平成29年度から詳細な設計に着手したと伺っております。
次に、今回の事業評価監視委員会にあたり、平成30年12月20日に、国から意見照会があり、耐震設計の見直し等の事業内容を確認したところでございます。その後、平成31年1月10日の事業評価監視委員会 において本事業の継続が了承されたことを受け、速やかに議会に報告を行うとともに、報道発表を行ったところでございます。
◎再質問
臨港道路東扇島水江町線整備事業についてです。 【市長】【港湾局長】
毎年、協議を行っているのに、なぜ議会への報告はしなかったのか?
議会への報告については、事業評価監視委員会の審査結果を「速やかに議会へ報告してきた」ということですが、国土交通省は、「市の港湾局とは毎年度末に港湾法第52条2項で定めている協議を行っている」と回答を得ています。議題は「事業変更や調整、事業費のことも入っている」とのことです。なぜ、この協議内容を毎年、その都度、議会に報告してこなかったのか、伺います。
15年の工事着工前に使用許可など議会へ報告したのか?
工事の着工についてですが、2015年から準備工、16年から橋梁下部工に着手していますが、工事に当たっては、港や道路、市有地の使用許可などを取らなければ工事に着工できません。川崎市は港湾管理者として、これらすべてに許可を出し、工事の着工を了承したということですが、議会への報告があったのか、伺います。
総事業費について、国は「前々から打診していた」としているのに昨年12月に初めて知ったのか?
総事業費についてです。2015年の工事着工前に、橋脚位置や耐震強化の構造変更も確定し、橋梁下部工事を請け負う事業者も契約金額も決まっていました。その時点でかなりの増額だということは知りえたはずです。しかし、16年の事業評価監視委員会の市議会への報告で、総事業費については「現時点では540億円の範囲内」と答弁しています。さらに、国交省は、「総事業費980億円について、昨年12月にいきなり出したのではなく、市の方には前々から打診をしていた」と述べています。本当に総事業費の増額は昨年の12月まで知らなかったのですか、伺います。15年の工事着工前に、工事契約について国に問い合わせたのか、伺います。
市長は事業継続を議会にも市民にも知らせずに独断で了承したのか?
国交省は、「昨年12月20日に総事業費を含む事業評価監視委員会の提案内容、対応方針について、市長から了解をもらったので、その後の委員会にて事業継続が了承された」ということでした。総事業費の大幅な変更を含む提案内容が委員会に報告があったのは、今年の2月8日、環境委員会です。市長は、総事業費440億円増の980億円の事業継続を、議会にもはからず、市民にも知らせずに独断で了承したのか、市長に伺います。
◎答弁(市長)
国の直轄事業につきましては、事業の進捗管理を行うため、国において事業評価監視委員会を開催し、事業の継続などについて審議されるものでございます。今回、事業評価監視委員会の開催にあたり、本事業にかかる原案に対して、国から照会があり、「徹底したコスト縮減による総事業費の圧縮とともに、事業期間内に完成させるよう整備を推進されたい」等の意見を提出したところでございます。
その後、本年1月の国の事業評価監視委員会において、整備による物流機能や防災機能の強化など、事業の必要性と効果について審議され、継続が了承されたものと伺っております。
審議結果などにつきましては、速やかに議会に報告するとともに、報道発表をしたところでございます。
◎答弁(港湾局長)
はじめに、港湾法第52条に基づく国との協議につきましては、国の直轄事業における本市の負担分を、毎年度、予算として議会にお諮りした上で、予算成立後、 翌年度に行う国の直轄事業について、協議を行うものでございます。
一方、事業評価監視委員会につきましては、国の直轄事業の進捗管理を行うため、国において開催されるもの でございまして、本年1月10日に開催された事業評価監視委員会におきまして、臨港道路東扇島水江町線を含む、直轄事業が審議対象となり、継続が了承されたものと伺っております。したがいまして、今回の事業評価監視委員会の審議結果を受けた、港湾法第52条協議につきましては、今年度末以降に行われるものと認識しているところでございます。
次に、当該事業にかかる工事許可などについてでございますが、川崎港においては、国の事業を含め、多くの民間企業などが事業活動を行うにあたり必要な港湾工事や水域占用許可など、様々な許可申請が行われているところでございます。これら申請に対して、港湾法第37条に基づき、港湾管理者として、港湾区域内の工事や水域占用の許可等を行っているものでございます。臨港道路東扇島水江町線整備事業につきましても、同法に基づき、国と協議を行っているところでございます。
次に、国における、事業内容の変更についてでございますが、東日本大震災を踏まえ、平成24年3月に道路橋示方書が改訂され、耐震設計の見直しが必要となり、 国において、平成26年度から様々な視点による見直しをはじめ、平成29年度から詳細な設計に着手したと伺っております。こうした状況を踏まえ、今年度に、事業費や耐震設計の見直し等の、事業内容が固まったことから、国において速やかに再評価を行うため、今回、事業評価監視委員会が開催されたと伺っております。同委員会の開催にあたり、本事業にかかる原案に対して、平成30年12月20日に、国から照会があり、総事業費や耐震設計の見直し等の、事業内容を確認したところでございます。
次に、工事契約についての国への問い合わせについてでございますが、本事業は国の直轄事業であることから、工事に係る契約などの手続きについては、国の役割と認識しております。
本市といたしましては、本事業の整備にあたり、周辺企業との調整や道路管理者や交通管理者との協議など、 国の直轄事業の早期完成に向けて、地元自治体としての 役割をしっかりと果たしてまいりたいと存じます。
◎再々質問
臨港道路東扇島水江町線整備事業についてです。 【市長】【港湾局長】
2015年着工時点で事業費増額を確認せずに工事を了承したのか?
総事業費についてですが、「工事契約についての国への問い合わせ」は行わなかったということです。しかし、2015年には、橋梁位置や耐震強化を含んだ新しい橋脚の工事が着工しているのです。国交省に問い合わせをしたところ、橋脚MP1~MP6、それぞれの契約金額と受注者について回答があり、総額は172億円にも上ります。容易に総事業費の増額は予想できたはずですし、工事が始まる前に事業費を確認するのは当たり前です。なぜ、国に問い合わせもせずに工事着工を了承したのか、伺います。
総事業費について国は「前々から打診」と言っている、12月に初めて聞いたのか?
国交省は、総事業費の増額について、「昨年12月にいきなり出したのではなく、前々から打診をしていた」と述べていますが、総事業費の増額については、本当に昨年12月に初めて聞いたのか、伺います。
市長が「推進されたい」と了承したから国は事業継続を決定した
昨年12月の事業評価監視委員会の原案に対して市長は「事業期間内に完成させるよう整備を推進された」との意見を出したとのことです。国交省は、この意見をもって川崎市は、総事業費980億円もの事業を了承したと判断して、1月に監視委員会で継続が了承されたと答えています。要するにこの市長の「整備を推進されたい」という意見をもって国は事業継続を決定したということですから市長の責任は重い。しかも、総事業費が540億円から980億円に膨れ上がる事業に対して、市長は、なぜ、議会にも市民にも知らせずに独断で判断したのか、市長に伺います。
◎答弁(市長)
国において、本事業を含む、直轄事業の進捗管理を行 うため、事業評価監視委員会を開催するにあたり、国か ら照会がございましたので、意見を提出したところでございます。 今回の事業評価監視委員会におきまして、継続が了承された本事業における来年度以降の本市負担分の事業費 につきまして、本議会にお諮りしているところでございます。
◎答弁(港湾局長)
本事業につきましては、国の直轄事業であり、交通政策審議会・港湾分科会の事業評価部会での審議を経て、 平成21年度に事業採択され、所要の手続きを経て、平成27年度から着工されているところでございまして、 本事業に必要な本市負担分の事業費につきましては、議会にお諮りしてきたところでございます。現在、京浜運河にかかる主橋梁部における橋脚の設置工事が概ね完了しているところでございます。 次に、国における、事業内容の変更についてでございますが、東日本大震災を踏まえ、平成24年3月に道路橋示方書が改訂され、耐震設計の見直しが必要となり、 国において、平成26年度から様々な視点による見直しをはじめ、平成29年度から詳細な設計に着手したと、伺っております。 こうした状況を踏まえ、今年度に、事業費や耐震設計の見直し等の、事業内容が固まったことから、国において速やかに再評価を行うため、今回の事業評価監視委員会の開催にあたり、平成30 年12月20日、国から照会があり、事業内容を確認したところでございます。
◎再々再質問
工事着工時に大幅な事業費増加が予想できたのに、ずっと同じ事業費を議会に報告
臨港道路東扇島水江町線整備事業について、市長に伺います。
総事業費についてですが、「議会にお諮りした」という答弁ですが、H27年度には橋脚位置、耐震強化など大幅変更を含む橋梁下部工事が着工し、契約内容も分かっており、大幅な事業費の増加が予想できたのに、国に問い合わせもせずに、H30年12月まで、ずっと議会には同じ総事業費で報告してきたということですか、伺います。
総事業費について国は「前々から打診」市は「昨年12月に確認」事実は?
今回の総事業費について「昨年の12月20日に確認した」という答弁ですが、国交省は「これだけの大幅変更なので、いきなり出したのではなく、前々から打診していた」と述べているのです。いったいどちらが真実を言っているのか、伺います。
市長は「意見を提出」というが、国は「市が了承したので事業継続を決断」
昨年の監視委員会の案について、市長は「国から紹介があったので意見を提出した」という答弁でしたが、これは単なる意見表明ではないのです。国の事業継続の決定を判断するための「正式な手続きだった」と国交省からうかがっています。しかも「総事業費980億円の了承も含むものだった」と述べています。国交省は「ここで川崎市の了承がなければ事業継続はできない」とも述べていました。それだけ重要な手続きだったという認識はなかったのか、市長に伺います。これだけ重要な案件を議会にも市民にも判断を仰ぐ必要はないとなぜ、判断したのか、伺います。
◎答弁(市長)
本直轄事業の経緯につきましては、東日本大震災を踏まえた、耐震設計の見直しが必要となったことや、国において、見直しのための様々な検討が行われたことなど、これまでも、その状況について、国から伺ってきたところでございます。また、平成29年度からは、こうした耐震設計の見直しなどを踏まえた、詳細な設計に着手したと、国から伺っているところでございます。この詳細な設計が行われたことにより、総事業費を含めた事業内容が、今年度に固まったとのことでございます。
これを受け、国において、事業評価監視委員会を開催することにあたり、本事業にかかる原案に対して、国から平成30年12月20日に照会があり、総事業費などを確認したところでございます。本市といたしましても、臨港道路東扇島水江町線整備事業は、川崎港の物流機能や防災機能の強化など、整備効果の高い事業と認識しているところでございます。
こうしたことから、国からの照会に「徹底したコスト縮減による総事業費の圧縮とともに、整備を推進されたい」等の意見を提出したところでございます。国の事業評価監視委員会におきまして、継続が了承された本事業における、来年度以降の本市負担分の事業費につきまして、本議会にお諮りしているところでございます。
◎最終意見
総事業費の増額は、もっと前から知りえたのに同じ事業費を報告
臨港道路東扇島水江町線整備についてです。
総事業費について国交省は「12月よりも前々から打診してきた」と述べているのに、「12月に総事業費は確認した」という答弁でした。事実関係が国とまったく異なっています。事業費の増大については、工事が着工した時点から、事業費の増大が知りえたのに、国に問い合わせもせず、議会にも同じ事業費の報告を続けてきました。
市長は事業判断を議会、市民にも知らせずに独断で了承
市長は国の事業判断の正式な手続きに対して、議会にも市民にも知らせずに独断で了承したことは、許されません。
臨港道路980億円は独断で決め、市民要求には「財政が厳しい」と応えない
総事業費が440億円増の980億円、約2倍に膨らむ大事業を精査もせずに市長の独断であっさり了承する。一方で、わずか16.5億円でできる中学卒業までの通院医療費助成は「財政が厳しい」といって応えない。こうした姿勢は、自治体としてまったく逆立ちしています。
こうした税金の使い方については、引き続き論戦をしていきます。質問を終わります。