四方嶺住宅跡地の有効利用ー市有地の4分の3を民間に売却
3月7日に行った、予算審査特別委員会での四方嶺住宅跡地の有効利用についての質問と答弁の大要を紹介します。
四方嶺住宅跡地の有効活用について、まちづくり局長に伺います
・2017年度の予算案に「市営四方嶺住宅跡地周辺整備事業費」として4億8600万円が計上されている
① 跡地利用の導入施設について、各ゾーンと面積を伺います。
答弁・・地域交流スペースを取り入れた特養ホームを導入する「福祉・地域交流ゾーン」0.4ha、スポーツや一時避難場所など多目的に利用できる「公園ゾーン」0.1haと「低層住宅ゾーン」1.2haの3つのゾーン。全体で1.7ha
・3つのゾーンを合わせた面積は1.7ha/川崎市の土地で、未利用の土地が1ha以上残っているのは、この四方嶺だけ/利用が決まっていない市の土地としては最大!
② 民間事業者に売却を予定しているゾーンと面積を伺います
③ 民間に売却する理由について伺います。
答弁・・売却するのは、公園と低層住宅ゾーンで1.3ha/老年人口が高い高津区の地域課題、行政課題なので公有地活用型による特養ホームを整備する/残る1.3haは民間活力による効率的・効果的な跡地利用を図るために民間事業者に売却する
・売却するのは住宅と公園の土地で、合わせて1.3ha/全体の4分の3の土地を民間に売るということ
・特養ホームの整備は行政課題なので公有地活用し、それ以外は売却するということですが/それ以外にも地域課題、行政課題もあるのではないでしょうか。
・私も周りの町会、自治会、スポーツ団体からいろんな要望を伺っています
・要望として出てきたのは、まず、全市的に不足している特養ホームは当然ですが、それ以外にも、災害時の避難場所、スポーツの練習ができるスポーツ広場、地域の方々が自由に使えるコミュニティスペースや集会所、そして、やはり全市的に不足している認可保育園などです。
・しかし、市民の方々が使えるスペースは、特養ホームに併設する地域交流スペースと民間のエリアに作られた0.1haの公園だけです/この広さで、地域の方々の要望が、本当にかなえられるのでしょうか。
(公園について)
④ 公園の広さが0.1haになっている理由を伺います
答弁・・都市計画の開発許可による提供公園の基準である6%を前提に、0.1haを基本的な面積とした
・広さは、300坪くらいで大きな家1軒分の広さ/この広さで野球やサッカーの練習はできるのでしょうか?
・最低基準が6%ということ/都市計画法にもとづく川崎市宅地開発指針では、環境保全、災害の防止上のために6%以上は公共空地を設置しなければならないという基準/民間に売却する場合でも6%に限定する必要はなく、市の土地として開発するならもっと広い公園にすることに何の問題もありません。
⑤ 以前からスポーツ団体が子母口小学校仮設校舎の跡地のグランドを利用していますが、どのような団体が使用しているのか、団体数もうかがいます。
答弁・・ソフトボールなど9団体が利用登録している/蟹ヶ谷自治会との間で1年間の暫定利用の覚書を締結
・9団体と多くののスポーツ団体が利用しており、練習場所が慢性的に不足/遠くは多摩川のグランドまで練習で出かけるー大変な苦労/子母口小と東橘中のグランドが2か所から1か所にまとめられ、仮設のグランドも使えなくなれば、さらに大変になる
⑥ スポーツ団体が使用しているグランドの広さを伺います
答弁・・仮設グランドの面積は2900㎡
・0.29haあり、高いネットも設置されています
・仮設グランドを使っているスポーツ団体の方に伺ったところ「最低でも50m*50m=0.25haは必要」/とても0.1haの広さで、他の市民も使っている公園では練習はできない
(地域交流スペースについて)
⑦ 蟹ヶ谷地域の自治会、町内会で、自前の集会所がない自治会、町内会はどのくらいあるのか、伺います
答弁・・集会所を有する自治会は10自治会のうち3自治会
・自前の集会所がない自治会、町内会は7団体もある/これらの自治会、町内会の要望に応えられるような地域交流スペースや集会室が必要
・2005年、蟹ヶ谷地域の町会・自治会など11団体、958名から多目的施設と公園の設置を求める請願が出され、全会一致で趣旨採択されている/
・請願では、「数年の間に緑が失われ、つぎつぎとマンションが建ち、人口が爆発的に増加しています」「蟹ヶ谷地域の町会には、自分の町会に会館を有していない町会があり、また、会館を有しているところでも、(住民が増加しているために)皆が入りきれない状況」、また「私たちの町会には高齢者や子供たちの憩いの施設がありません」として、「周辺住民が使用できる多目的の施設(集会室、図書館)」と公園の建設を要望する内容。
・これだけ多くの町会や、自治会、住民の方々から過去に要望が出ている/これに応えるような地域交流スペースとする必要がある
(都市計画について)
⑧ 都市計画における「住宅市街地の開発整備の方針」案では、蟹ヶ谷地域はどのような方向性が示されているのか、伺います
答弁・・生活居住機能に加え、福祉機能、地域交流の場、公園など良好な住環境を形成する/方針案にこの基本的な考え方を示す
・都市計画の方針案では、蟹ヶ谷地域は住宅市街地の開発整備重点地区に指定され、「地域交流の場の創出や健康増進、避難場所として利用できる公園等を配置する」「公園、社会福祉施設等の整備を図る」としている/都市計画でも社会福祉施設、健康増進、避難場所としての公園の整備を強調しています
⑨ 隣接する国有地の跡地利用はどのような計画なのか、伺います
答弁・・H29年度以降、民間に売却により跡地利用をすすめる
・民間に売却するということ/1.5haもある広い土地ですから大規模なマンションの建設も考えられる
⑩ 今以上の住宅建設で、人口が増えた場合の課題を伺います
答弁・・人口増加に伴う一定の需要増が考えられることから、過大な住宅供給とならないよう、低層住宅ゾーンとする
・国有地にマンションなど大規模な住宅が建設されれば、ますます、保育園や学校、避難場所が必要となる
・市の基本方針でも「小中学校の教室不足が懸念されるため、過大な住宅供給とならない配慮が必要」と書かれているのに、なぜ、3/4の土地を民間に売って住宅を建てさせるのか?まったく矛盾しています。
(総務企画局長に)
⑪ 蟹ヶ谷地域の避難所はどこになっているのか、伺います。
答弁・・子母口小と東橘中が避難所
・子母口小と東橘中ということですが、蟹ヶ谷地域からこの避難所に行くには、急傾斜地を降りて、矢上川の橋を渡った先にある
⑫ 蟹ヶ谷地域における防災上の危険地域の指定は、どのようなものがありますか、伺います
答弁・・矢上川の洪水浸水区域、急傾斜地崩壊危険区域、土砂災害警戒区域に指定
・この地域は、山と川に囲まれた地域で、洪水浸水地域、急傾斜崩壊危険区域、土砂災害警戒区域と3つの危険区域に囲まれている
・矢上川の洪水ハザードマップでは、避難所の東橘中が浸水区域に指定されていますが、
⑬ 蟹ヶ谷地域の方は、東橘中にはどのような経路を通って避難をするのか、豪雨の際には矢上川を渡るのに危険はないのか、伺います
答弁・・避難所の東橘中は浸水想定では0.5m未満となっており、体育館と校舎を指定緊急避難場所に指定/大雨により災害が発生する可能性が高まった場合には、早めに避難所等の安全な場所へ避難をしていただくために「避難準備・高齢者等避難開始」などを発令する/矢上川の洪水が発生した場合には、自宅の上階や近隣建物への垂直避難を
・多くの地域の方から「豪雨災害の時、お年寄りがあの急坂を下って、溢れそうな川の橋を渡って、浸水の危険がある東橘中まで行くことができるのでしょうか」という声が出ている/だからこそ、山を降りていく必要のない、洪水の心配もない四方嶺住宅跡地に避難場所をという要望が出ている
⑭ 公園ゾーンは「災害時の避難場所としても寄与する公園」としていますが、0.1haの広さにどれくらいの人数を収容できるのか、伺います。
答弁・・避難可能人数は、避難者1人当たりの必要面積を2㎡とした場合、0.1haの広さでは500人程度の避難が可能
・蟹ヶ谷だけでも人口は8600人いるのに、この公園に避難できる人数は、わずか500人/0.1haという公園の広さではとても狭すぎる
⑮ 熊本地震での熊本市の避難者数は想定とどのくらい違ったのか、伺います
答弁・・「熊本市地域防災計画書」では避難生活者を58000人と想定/熊本地震では本震翌日では最大11万1000人の方が避難された
・熊本市では58000人と想定していたのが、その2倍の11万人の方が避難されたということ/熊本地震の教訓から言えば、川崎市が現在、想定している避難者数を超える避難者が発生する可能性があり、今の避難場所だけでは足りない可能性が大きい/少しでも避難場所を多く確保する必要がある/そういう意味で四方嶺住宅跡地には、もっと広い避難場所を確保する必要がある
(こども未来局長に)
⑯ 高津区における2017年4月の保育利用申請者のうち、一時利用調整終了時の保留者数はどのくらいですか、伺います
答弁・・高津区では、この時点で736人の方が保留となった
・1月時点で認可保育園に入れないという通知を受け取った高津区の方は、736人もいて、中原区に次いで全市で2番目に多い
⑰ 過去3年間で4月に蟹ヶ谷保育園の入所を希望した児童のうち、入所にならなかった児童数を伺います
答弁・・H26年4月は69人、H27年4月は84人、H28年4月は91人
・昨年4月に入れなかった方が91人もいる。認可保育園1か所分が不足している/認可保育園は、全市的にも不足していますが、高津区や蟹ヶ谷地域では特に不足している
(まとめ)
・以上のことから、四方の嶺住宅跡地に対して、地域住民から出された要望として避難場所やスポーツができる公園などがありますが、広さは全く不十分です/全市的に不足している認可保育園の計画も入っていません。
・これらの要望は切実な地域課題であり、全市的な行政課題です/これらの行政課題については、公有地を最優先に活用するべきであり、市民の貴重な土地を売却するべきではありません。
・都市計画でも「社会福祉施設、避難場所や公園」のための利用を掲げ、市の方針でも「小中学校の教室不足が懸念されるため、過大な住宅供給とならない配慮が必要」といっているのに、不足している保育園も十分な広さの避難場所、公園も確保せずに民間に売却して住宅を建設するというのは、市民の納得は得られません。
・四方嶺住宅跡地というのは、川崎市に残っている最大の未利用の土地です。まず、住民の声、要望をよく聞くための住民説明会を開くこと/そして市民の要望をきちんと取り入れた計画にするべきです。以上のことを要望します。