むねた裕之
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川崎市の予算案―市税収入は4年連続過去最高なのに「財政は厳しい」?

2月28日、日本共産党・市古議員の代表質問での予算案の特徴について、質問と答弁(概要)を以下に紹介します。

質問

最初に予算案の特徴についてです。

新年度予算の歳入は前年度当初比698億円10.9%増と過去最大規模の7088億円。県費負担教職員の市費移管分560億円を除いても6528億円、対前年度比+138億円の増です。歳入の根幹である市税収入は対前年度予算比較で57億円1.9%増の3072億円で4年連続過去最高となりました。

 市税収入のうち、法人市民税は6億円の減となっています。中小企業は税収増ですが、大企業が減収となっていることが要因です。政府の研究開発減税の拡充など大企業優遇税制の影響です。人口増による所得の増加により個人市民税は30億円増、住宅の増加により固定資産税は31億円増となっています。

この税収増は、想定以上の人口増加によるものです。市の人口は今年中に150万人に達する予定ですが、2014年8月に「総合計画」の前提資料として出した市の人口推計から、3年も前倒しで達することになり、想定の2倍の早さで人口が増えています。

 この間の歳入額は、予算と決算では大きな誤差が出ています。2015年度は予算の市税収入では2963億円だったのが、決算は3007億円で、予算額は44億円も低く見積もられていたことになります。他の年度の市税収入をみても40億円低く見積もっています。これを前提とすると、2017年度の歳入額は提案より40億円多くなると予測できます。提案された予算案の歳入額をもって、2017年度は「財政が厳しい」という理由は成り立たないと考えます。

 これだけ人口が想定以上に増加し、市税収入が増えているのに、市長は相変わらず「財政が厳しい」と強調しています。その理由の一つに消費税増税が2年半延期されたことによるマイナスの影響が出るとしています。しかし、これは、歳入の減少だけを見た推計です。消費税が10%に増税されれば、1.8億円の増収になりますが、物品などにかかる費用が増大し、歳出は47.8億円の支出増となり、差引46億円の負担増となります。消費税率を上げれば市や市民への負担は重くなるというのが実態ですから、消費税率引上げ延期をもって市の財政を厳しくするという理由にはなりません。

「財政が厳しい」というもう一つの理由に、減債基金からの185億円の借入もあげられています。しかし、2017年度の減債基金への積立額は449億円、取崩額は205億円で244億円も積み増して、新年度末の減債基金の残高は2209億円にもなります。市民一人当たりにすると政令市平均の1.8倍にもなります。さらに、毎年、100億円ずつ積み増しをして10年後には3000億円にも達する予定です。市のお金である減債基金からの借り入れを「財政が厳しい」理由にあげること自体おかしなことですが、減債基金に取崩額分だけを積み立てれば244億円の財源が生まれ、185億円の収支不足もなくなるわけです。そうすべきではないですか、市長に伺います。

 結局、消費税率引上げ延期も減債基金からの借り入れも「財政が厳しい」という根拠にはならないことになりますが、市長に伺います。

答弁

・減債基金への積み立てについては、償還財源に不足がきたすことがないよう、今後も必要額の積み立てを行う

・財政状況については、社会保障関連費が引き続き増加して、大規模な施設整備等の財政需要が増加しているため財政は厳しい状況であり、減債基金からの借入を行わざるをえない

・消費税率引上げ延期に伴い、社会保障関連費の財源となるはずであった地方消費税交付金の減収額は32億円に上る

質問

 消費税についてですが、税率引き上げ延期により「減収額は32億円」という答弁ですが、これは歳入だけの影響額で、歳出の影響額を考慮に入れていません。消費税を10%に引き上げた場合は、歳出は30億円もの負担増になりますから、減収額はわずか2億円となります。

「1.8億円の増収」という数字は、「使用料・手数料等に反映した場合」という答弁ですが、結局、市民への負担増を前提にした数字です。昨年の6月議会で、「自治体への負担増にどのように対応するのか」という質問に対して、市バスは料金値上げ、上下水道料金も値上げ、学校の給食費も値上げで対応するという答弁でした。結局、消費税率が10%に引き上げられれば、一般会計だけではなく、すべての会計で負担増になることは、間違いなく、その負担は、市民に転嫁するか、市の財政で負担するしかありません。その意味で消費税率引き上げの延期は、マイナス要因ではないのではないですか、市長に伺います。

答弁

・消費税率の引き上げ分は、その全額を社会保障関連費に充てるとされているので、その延期により財源が見通せなくなり市民サービスに大きな影響が出る

意見

市長は消費税について政府のような答弁をしました。

確かに地方消費税の使途は社会保障の財源としているかもしれません。しかし、そもそも消費税は低所得者への負担が重い逆進性の強い不公平税制であるうえ、消費税を8%に引き上げたときも社会保障に充てるといいながら、従来の財源を消費税に置き換えただけで、浮いた分を大企業減税、無駄な公共事業、軍事費などに使ってきたのが実態です。社会保障はこの間改悪の連続でした。消費税に頼らない社会保障の実現こそが求められていることを指摘しておきます。