むねた裕之
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川崎市―新年度予算:財政力トップなのに福祉・コロナ予算は不十分

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3月1日、川崎市議会3月議会で日本共産党は団長・宗田裕之が代表質問を行いました。そのなかの「新年度予算案の特徴について」、その質疑を以下に紹介します。

【質問】

予算規模は8年連続、過去最大、財政力は政令市トップ

新年度予算の特徴についてです。

新年度一般会計予算の規模は、前年度比577億円増の8785億円で8年連続、過去最大。これは本庁舎等建替え事業や市税収入の増によるものです。市税収入は、前年度比217億円増の3671億円で、これは個人市民税が88億円増、法人市民税が43億円増、固定資産税73億円増などによるものです。財政力指数は、政令市トップで、新年度は普通交付税・不交付団体になる見込みです。財政健全化指標は、すべて基準値を下回っており、極めて優良。2020年度決算で他の政令市と比較して、一人当たりの市債残高は、政令市の平均よりも12万円低く、借金の負担額が少ないのが特徴です。川崎市の人口増加率、生産年齢人口割合ともに政令市で最も高く、人口推計でも今後8年間は増加を続けるため市税収入の増加は今後8年間続くと予想されます。このように、市税収入、財政力指数、財政健全化指標のどれをとっても、川崎市は政令市でトップクラスの財政力を持っており、今後8年間はさらに財政力はアップすると見込まれます。

市税収入:市民からは極めて多く、法人からは極めて少ない

市税収入についてですが、新年度予算では、個人市民税1738億円、法人市民税151億円が計上されています。市税の構成比を政令市で比較すると20年度決算では個人市民税は48.3%で政令市の中で上から3番目、法人市民税は4.3%で下から2番目です。川崎市は政令市の中で、市民からの税収が極めて多く、法人からの税収が極端に少ない都市となっています。

収支:昨年度プラスなのに、なぜ来年度―286億円なのか?

収支フレームについてです。

わが党は昨年の決算議会で、昨年度の決算収支がプラスになったのに、なぜ、今年度収支が―286億円にもなるのかと指摘しましたが、指摘した通り、今年度収支は、決算見込みでは―129億円とマイナス幅が半分以下になっています。しかし、新年度予算では、収支は-239億円としています。収支フレームではコロナの収束状況に応じて収支は改善する方向なのに、どうして今年度に比べて新年度が2倍ものマイナスが出るのか、伺います。新年度は市税収入が217億円増収になるのに、何が原因で200億円以上も減収になるのか、伺います。

減債基金:他都市と比べて1.7倍、約500億円多い

減債基金についてです。

市が「財政が厳しい」としている大きな理由に減債基金の問題があります。新年度予算で減債基金残高は、一般会計分でみると積立額452億円、取崩額219億円で2529億円となり、一人当たりの残高は政令市平均の1.7倍にもなり、他都市と比べて極めて多い残高となっています。22年度の借入総額は850億円の見込みですが、減債基金の残高から借入総額を差し引いた実質残高は約1679億円です。この金額は、取崩額の4年分という他政令市平均と比較すると約500億円多い残高となります。借入額を差し引いた実質残高でも他都市と比べて極めて多いわけですから、減債基金からの借入を理由に財政が厳しいとは言えないと思いますが、市長に伺います。今は非常時なのですから、毎年約400億円前後の積立額を減らし、コロナ対策、福祉・暮らし、防災のために使うべきです、市長に伺います。

個人市民税は政令市トップなのに社会保障費は政令市の平均以下

社会保障費と個人市民税についてです。

この間、「財政が厳しい」という理由の一つに社会保障費、特に扶助費の増大を挙げています。新年度予算では、扶助費は前年度比89億円の増ですが、これは保育事業費や障害福祉サービスのためにどうしても必要な費用であり、増加した部分のほとんどは国や県からの補助で賄われるので、扶助費の一般財源の比率である経常収支比率は20年度決算では19%にすぎません。経常収支比率は5年前と比べてもほとんど変わらず、扶助費は増えていません。しかも、一人当たりの扶助費の額は引き続き政令市平均を下回っており、福祉予算である民生費も1人当たりにすると政令市平均より約1万円も低い状況です。一方、一人当たりの個人市民税は、政令市平均より約3万円高く、政令市トップです。個人市民税は政令市で最も高いのに、その税収が福祉・暮らしには十分還元されていないのが特徴です。扶助費は増えておらず、他の政令市と比較しても不十分だという認識はあるのか、市長に伺います。

不要不急の大規模事業100億円、大企業1社27億円、一方、中小企業に11億円

臨海部の大規模事業についてです。

新年度の臨海部関連の予算についてです。港湾費は一般会計、特別会計合わせて163億円、臨海部国際戦略本部の予算13億円が計上されています。この中には、臨港道路東扇島水江町線整備に61億円、コンテナターミナル整備事業に17億円、東扇島堀込部土地造成事業に19億円など不要不急の事業に約100億円が計上されています。一方、これら事業が必要だとする根拠となっていたコンテナ取扱量の目標は40万TEUから20万TEUへと半分に引き下げられたため、これらの事業はますます不要不急となっています。さらに臨海部から撤退縮小する企業に奨励金を出す制度が含まれている臨海部投資促進事業も始まり、この制度により、撤退を計画しているJFEスチールは1社で最大27億円の奨励金を受け取ることになります。中小企業の支援・商業振興予算は金融対策費を除けばわずか11億円です。この額と比較すると臨海部の大規模事業や大企業に対してあまりにも優遇しすぎているという認識はあるのか、市長に伺います。不要不急の事業や大企業のみを優遇する制度は中止・延期をすべきと思いますが、伺います。

市独自のコロナ予算にわずか30億円、中小、医療への財政支援はほとんどゼロ

コロナ関連予算についてです。

新年度予算では、今年度からの繰り越しを含めると440億円計上されていますが、市独自支出額は37億円です。さらにここから融資、コロナ後の対策費を除くとわずか30億円にしかなりません。その中には今一番必要な中小企業や非正規労働者、医療機関への財政的支援はほとんどありません。コロナの感染拡大が急拡大している中、それらの財政的支援は待ったなしの状況です。

一方、地方創生臨時交付金が国から32億円交付されます。中小企業や非正規労働者、医療機関に対して、臨時交付金を使って緊急の財政支援をするべきです、市長に伺います。

【答弁】

予算案(収支)について、令和3年度の当初予算におきましては、市税収入は、感染症の影響による景気の落ち込みに伴う大幅な減少を見込んでおりましたが、個人所得や企業収益に対する影響力那艮定的であったことなどから、当初見込んだほどの落ち込みはなく、この度の補正予算では、 154億円を増額したところでございまして、この現計予算と比較して、令和4年度予算は、 63億円の増加となっております。

しかしながら、令和4年度は、本庁舎の建替えや橘処理センターの整備などにより、投資的経費が一時的に増加するとともに、普通交付税及び臨時財政対策債が皆減となることなどから、減債基金からの新規借入額は令和3年度現計予算と比較すると、110億円の増加となったところでございます。

減債基金への積立てにつきましては、世代間の公平を図るために、市債の満期一括償還に備えて計画的に行っている償還そのものであり、この減債基金から新規借入を行わざるを得ない状況こそが、大変厳しい財政状況であることを示していると考えております。

こうした厳しい財政状況下におきましても、市民の皆様の安全・安心な暮らしを支えるため、現下の喫緊の課題である感染症対策をはじめ、社会保障や防災’減災対策などにも、着実に対応しているところでございます。

社会保障費につきましては、待機児童対策の継続的な推進や高齢者・障害者施策などにもしっかりと取り組んでおり、令和4年度予算案の扶助費は、約2,268億円で、前年度と比べ4.1%増加しているところでございます。

また、本市が必要な社会保障にしっかりと取り組んでいることは、毎年度の決算におきまして、扶助費に係る市民一人当たりの一般財源が指定都市平均を上回っていることから、はっきりと見てとれるところでございます。

臨海部の事業について、力強い産業都市づくりの根幹をなす川崎臨海部が、今後も雇用や税収面から市民サービスを支え続けるためには、同エリアの活性化に向けた取組が大変重要でございます。

本市といたしましては、引き続き、中小企業の競争力強化や、魅力と活力のある商業地域の形成に向けた取組を的確に進めるとともに、立地企業と大規模な士地利用転換に取り組むなど、将来を見据えた力強い産業都市づくりの実現に向けて各事業を着実に推進してまいります。

コロナ関連事業について、令和4年度予算案におきましては、希望する全ての市民の方々へのワクチン接種のほか、療養者支援やPCR・抗原検査の実施等の感染症対策、医療機関に対する支援、中小企業を対象とした資金繰り支援や新しい生活様式に向けた経営支援などに必要な事業費を計上しているところでございます。

感染症をめぐる盾勢は、現在も目まぐるしく変化しておりますが、市民の皆さまが安心して暮らせる日常を取り戻せるよう、社会経済状況を注視しながら、国、県、市の役害1分ゞ旦を踏まえ、感染拡大を防止し、市民の生命(いのち)・生活・仕事を守るため、総力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。

【意見・要望】

臨海部の大規模事業についてです。

 不要不急の大規模事業に約100億円、撤退する大企業に奨励金27億円などの優遇策。一方、中小企業の支援・振興予算は融資を除けばわずか11億円などを示し、「臨海部の大規模事業や大企業に対して、あまりにも優遇しすぎではないか」と質問しました。市長は「川崎臨海部は雇用や税制面から市民サービスを支えている」という答弁でしたが、それは臨海部に限らず、市内中小企業も同じです。また、臨海部の「立地企業と大規模な土地利用転換に取り組む」ために必要な事業だという答弁もありました。しかし、中小企業には、撤退しても奨励金は出ませんし、30年間、土地を無償に貸与する制度もありません。不要不急の事業や大企業のみを優遇する制度は中止・延期をすべきです。

【再質問】

減債基金についてです。

財政が厳しいという根拠について、「減債基金から借入れしているから厳しい」という答弁でした。借入して減債基金が足りなくなるのでしたら理屈は通りますが、借入総額を差し引いた実質残高は、他都市と比較して約500億円も多いわけです。借入しても減債基金の実質残高は十分すぎるくらいあるのです。減債基金からの借入を理由に財政が厳しいとは言えないと思いますが、市長に伺います。

社会保障費についてです。

社会保障費、特に扶助費の増大を財政が厳しい理由にしていたので、「扶助費の比率は増大していない」ことを示し、「扶助費はむしろ不十分ではないのか」と質問しました。答弁は「予算案の扶助費は前年度に比べて増加している」という答弁でした。人口が増加しているので、扶助費が増加するのは当たり前です。しかし、一般財源の比率である経常収支比率は19%と5年前から増えていないのです。しかも、一人当たりの扶助費の額や福祉予算である民生費も政令市平均より低いのです。扶助費の増大を財政が厳しい理由にすべきではないと思いますが、市長に伺います。

【答弁】

はじめに、減債基金への積立てにつきましては、市債の償還そのものであり、残高の多寡にかかわらず当然に予算計上すべきものでございます。この減債基金から新規借入を行わざるを得ない状況こそが、厳しい財政状況であることを示していると考えております。

次に、社会保障費につきましては、本市におきましては、財政環境が厳しい中にあっても、待機児童対策等の子育て環境の整備や高齢者・障害者施策などにしっかりと取り組んでおり、その証左として、扶助費に係る市民一人当たりの一般財源は指定都市平均を上回っているところでございます。