川崎市の高齢者施設クラスターで49人感染、13人死亡・・「命の選別」そのもの
6月10日、川崎市第2回定例会で日本共産党を代表し片柳議員が代表質問を行いました。その中の「高齢者施設でのクラスターについて」の質疑を紹介します。
●質問
高齢者施設、介護事業所でのコロナ対策についてです。
川崎市は、1月18日に福祉施設に対して入院調整、119番通報を制限する通知を出しました。本来、福祉施設から陽性者が出た場合は高齢者・障がい者の重症化を防ぎ、クラスターを防ぐためにも入院措置は不可欠です。私たちはこの措置は「命の選別」であり、感染拡大防止の観点からも撤回を求めました。しかし、いまだに解除されていません。第4波のなか、病床がひっ迫し陽性者を施設内で療養させた大阪府門真市や神戸市では高齢者施設でクラスターが発生し、多数の死亡者が出ましたが、本市でも幸区の高齢者施設で6月6日時点で、職員14人を含む49人のクラスターが発生し、入所者13名が死亡。うち、7名は施設内で亡くなられたとのことです。私たちが心配していたことが現実になっています。やはり、あの通知はただちに撤回し、施設内で陽性者が出たときは速やかに入院させるべきです。伺います。
●答弁
「神奈川モデル」においては、症状に応じて入院が必要と医師が判断した方に入院していただくことを原則としており、とりわけ高齢者施設におきましては、県から県内全施設あてに発出した「高齢者福祉施設における対応の手引き」に基づきJ池設内感染の予防・拡大防止対策や感染者が発生した場合の健康管理基準に即した刈応に御協力いただいておのます。
また、幸区内高齢者施設におけるクラスターにつきましては、保健所支所と施設嘱託医が連携して、患者とその家族に、症状が悪化した際の入院希望等について聞き取りを行い、御希望に沿った対応を行っており、入院が必要かつ希望される方については全員入院していただいております。
なお、1月18日付け発出の文書につきましては、緊急性がない軽症・無症状であっても、施設からの119番による救急搬送要請が頻発し、真に必要な方々の速やかな入院が困難になるなど救急医療に深刻な影響が生じていたことから、医療現場の実情を踏まえた入院要請の目安をお示ししたものでございまして、その後、県から施設療養の指針が示されたことを受けて、 2月12日付けにて同指針に即した対応を行う旨、施設あて通知したところでございます。
●再質問
答弁では「神奈川モデルでは、入院が必要と医師が判断した方は入院していただくことが原則」とのことですが、とりわけ高齢者施設においては陽性者が出た場合はクラスターや重症化を防ぐために、入院が原則でした。しかし、こういう原則を崩し、入院措置が遅れた結果、幸区の高齢者施設では職員14名を含む49名が感染し、入所者13名が死亡する事態となりました。症状が悪化する前に入院できたら救える命があったのではないでしょうか。市は、このような事態を起こした自責の念はあるのか、伺います。
●答弁
「神奈川モデル」においては、自宅・施設等の別なく、症状に応じて入院が必要と医師が判断した方に入院していただくことを原則としております。
その上で、幸区内高棚者施設におけるクラスター対応につきましては、発生時から現在まで、保健所支所と施設・嘱託医が連携して>患者とその家族に、症状が悪化した際の入院希望等について聞き取りを行った上、入院が必要かつ希望される方については全員速やかに入院していただいておりますことから、適切に対応しているものと考えているところでございます。
●再々質問
病床がひっ迫していないのに入院措置せず、陽性者は入院という原則が破られた
入院の判断について、「神奈川モデルでは、自宅・施設の別なく、症状に応じて入院が必要と医師が判断した方」に対して入院措置をするとの答弁でした。神奈川モデルのスコアでは、75歳以上の高齢者で基礎疾患があれば、みな5点で入院対象になります。この施設の入所者については、陽性者のほとんど全員が入院対象です。県の「高齢者福祉施設における対応の手引き」では、「陽性が確認された場合、原則は入院」と書かれており「県内病床が逼迫状況や感染者の病状等に応じて当該施設での療養をお願いする場合がある」と述べています。陽性者は入院が原則であり、現在、県内病床は逼迫状況にはなく、感染者の病状はスコアで判断されるので、スコアが5点以上であれば入院措置は必須のはずです。それなのに陽性者35人のうち入院された方は12人ということで、23人の方が入院措置されず施設に残されました。
入院判断をご家族の判断にゆだねること自体、県の方針と違う
「症状が悪化した際の入院希望」をとったという答弁でした。しかし、県のしおりでは、希望をとるのは「県内病床が逼迫していて、当該施設での療養」を余儀なくされている方に対してです。しかも、県の担当者に入院判断について聞いたところ「病床の状況を見て、あくまでも保健所の判断で振り分ける。ご家族の判断にゆだねることはない」とのことでした。「入院を希望された方は全員入院している」との答弁もありました。ということは、自ら入院希望しなければ入院措置されなかったわけです。このように入院判断をご家族の判断にゆだねること自体、県の方針と違いますし、入院が必要な方が多数入院できなかったことは、重大な過失です。
検査や治療の設備がほとんどない施設で陽性者は留め置かれた
施設に残されている方が、症状が悪化しないように、この施設で検査や治療ができたのでしょうか。この高齢者施設には、感染者の症状を診るレントゲンやCTなど検査設備はありませんし、医療が必要な時に治療を行う装置もほとんどありません。市が入院措置を取らなかったために、検査も治療の設備もほとんどない施設で、重症化リスクが高い高齢者が放置された形となりました。また、死亡した方13人のうちの7人が施設で亡くなっているように、重症化してからも入院措置が取られない方が半分以上いました。悪化する前に入院措置を取っていれば助かる命はあったはずです。助かる命は助けるべきです。陽性がわかった段階で入院を勧めるべきだし、今からでも施設内に残っている方に入院を勧めるべきです、伺います。
49人が感染し13人の死亡者を出した対応は「適切な対応なのか」?
この対応について「適切な対応だった」という答弁ですが、この対応の結果、1つの施設から49人の感染者、13人の死亡者が出るという重大な事態を引き起こしたのです。このような深刻な結果が出ていても、「この対応は適切だった」というのか、伺います。入院希望者以外は入院できず、検査も治療もできない施設で放置され、重症化しても入院措置がされない、これは「命の選別」ではないのか、伺います。
●答弁
まず、お亡くなりになられた方々にお悔やみ申し上げたいと存じます。
繰り返しになりますが、この度の案件につきましては、保健所・施設・嘱託医・ご本人及びご家族の間において、医学的な知見並びにご本人・ご家族の思いを踏まえながらケアと治療の方針を共有した上で、必要かつ適切な対応を図っているものでございまして、「命の選別」には全く当たらないものと考えております。
また、このことは事前に判断のルールや数値、ご家族の意向など御会派に詳細にわたって丁寧に説明をさせていただいておりまして、その上での「命の選別」との誤った発言を繰り返すのは、御遺族の心情などにも配慮を欠くものと申し上げざるを得ません。
●最終意見
1月に市は福祉施設に対して、陽性者が出ても入院措置せず、入院調整、119番通報を制限する通知を出しました。わが党は3月議会で、この通知は施設内にクラスターを広げ、高齢者の命を危険にさらす「命の選別」だと追求してきました。第4波では、川崎市と同様の措置を取った大阪や神戸で高齢者施設でのクラスターが発生し多数の方が亡くなった事例が多発。それでも市は、この通知を撤回しませんでした。そして、5月末に幸区の高齢者施設で、49人の方が感染し、13人が死亡するという重大事態が起こりました。
「命の選別」そのものなのに「適切な対応」と強弁し、反省の言葉もない
市は、希望を聞くという形をとり入院判断を家族の判断にゆだねましたが、これ自体県の方針とも違いますし、実際に市が行ったことは「命の選別」でした。入院希望者以外は入院できず、検査も治療もできない施設で放置され、重症化しても入院措置がされない、まさに「命の選別」そのものでした。13人の命が失われたのに、市は「この対応は適切だった」と強弁し、反省の言葉も一言もなく開き直りました。人の命を軽視する姿勢が明らかになりました。高齢者施設内の陽性者は、速やかに入院措置を取ることと、陽性者は入院させるという原則を堅持することを求めます。