川崎市―臨海部の不要不急の事業に約100億円/リストラする企業に27億円
3月2日、川崎市議会3月議会で日本共産党は団長・宗田裕之が代表質問を行いました。そのなかの「臨海部の大規模事業について」、その質疑を以下に紹介します。
【質問】
臨海部の大規模事業について、伺います。
臨海部の不要不急の大規模事業に約100億円
21年度予算の臨海部関連の予算についてです。港湾費は一般会計、特別会計合わせて162億円。臨海部国際戦略本部の予算は9億円が計上されています。この中には、臨港道路東扇島水江町線整備に73億円、コンテナターミナル整備事業に20億円、東扇島堀込部土地造成事業に7億円など不要不急の事業に約100億円が計上されています。さらに臨海部から撤退縮小する企業に奨励金を出す制度が含まれている臨海部投資促進事業が新規に追加されました。不要不急の大規模事業としては川崎縦貫道路整備事業費の予算も計上されています。
川崎港コンテナターミナル整備についてです。
東京港よりも多い補助金をつけても目標には達せず
船を呼び込むために川崎港利用促進コンテナ貨物補助制度に1億7000万円を計上し、コンテナ貨物の6割に補助金をつけています。この予算額は取扱量が川崎港の31倍ある東京港よりも多く、対象貨物の割合や予算総額から言っても異常な高さとなっています。これほどの補助制度を使ってもコンテナ貨物取扱量は目標40万TEUに対して期限の8年後でも半分程度にしか届かず、目標を達成する見通しはたっていません。昨年から今年1月までは3基あるガントリークレーンのうち1基が故障して2基しか稼働していませんが、2基のガントリークレーンで十分対応できる貨物量しかありません。コンテナターミナルを拡張する理由は一つもありません。市はコンテナ貨物取扱量の目標が達成できないということで見直しを考えているということですが、見直しするのなら計画を変更すべきです、伺います。
臨海部投資促進制度についてです。
黒字なのにリストラをするJFEスチールに27億円の奨励金
この事業の対象は臨海部の大企業のみで、生産設備など償却資産に対する支援制度と臨海部から撤退・縮小する企業に対して製造業に売却した場合奨励金を出す2つの制度があります。今回、予算が初めて計上され、推進する組織として戦略拠点推進室を設置するとしています。
臨海部の大企業は、この事業の制度1により補助金22億円を受け取り、撤退を計画しているJFEスチールは、制度2により最大27億円の奨励金を受け取ることになります。JFEは来年度黒字に転換する企業ですがリストラ計画が進んでおり、JFEが撤退すればそこで働く4000人の雇用が失われ、42社の関連企業の仕事がなくなる可能性があるのです。黒字なのにリストラをして臨海部から撤退するような企業に投資をしたり、臨海部の大企業に特化して支援する臨海部投資促進事業はやめるべきです、伺います。
【答弁】
川崎港コンテナターミナル整備についての御質問でございますが、令和元年のコンテナ貨物量は、官民一体となった積極的なポートセールスや施設整備の結果、約15万TEUと、 5年連続で過去最高を.更新しており、コロナ禍における令和2年のコンテナ貨物量も、前年より増加しているところでございます。
本市では、来年度から、増加するコンテナ貨物量に対応するため、空コンテナ置場であるバンプールやシャーシプールの整備を行う予定としております。
このように、コンテナターミナルについては、適時適切な施設整備を進めているところでございますが、目標年次を平成30年代後半とした現在の港湾計画につきましては、川崎港を取り巻く社会情勢の変化等も踏まえ、今後予定している計画改訂に向け、貨物量の推計を行うなど、作業を進めてまいりたいと存じます。
川崎臨海部投資促進制度についての御質問でございますが、川崎臨海部におきましては、設備の老朽化や製造業以外への士地利用の転換といった課題が顕在化しており、この状況に手を打たなければ、コンビナート全体の操業環境の悪化等が懸念されることから、市内経済を支える川崎臨海部の活性化に向けた取組が大変重要であると考えております。
このため、臨海部に長年立地する企業が行う、高度化・高機能化を目的とする設備投資に対し、 5億円を上限に補助する制度や、土地利用転換が見込まれた場合に、今後ともコンビナートとしての機能を維持するため、一年分の課税額の一部を奨励金として交付する制度につぃて、産業機能の強化と市税収入の増加の双方の視点を踏まえて、策定するものでございます。
力強い産業都市づくりの中心を担う川崎臨海部が、今後とも、ものづくりの拠点として選ばれ続けるために、本制度を適切に運用し、産業競争力の強化を図ってまいります。
【質問】
臨海部投資促進事業についてです。
南渡田地区に300億円以上を投資して税収増は年0.8億円
黒字なのにリストラをして臨海部から撤退するような企業に奨励金を出したり、臨海部の大企業に特化して支援する臨海部投資促進事業はやめるべきとの質問に対して、「産業機能の強化と市税収入の増加」のために実施するという答弁でした。
しかし、実際はどうでしょうか。この制度を使うと想定されている南渡田地区の拠点開発について、12月議会では、導入される産業について質問しましたが、どんな産業が来るかは検討中と答弁。「産業機能の強化」どころかどんな産業が入ってくるかも未定です。経済波及効果についても「具体的な数値は算出していない」という答弁でした。実際この制度を使うことになると、JFEスチールが撤退すれば制度2の奨励金に11億円、川崎アプローチ線をひけば総事業費300億円、制度1を使えば数億円かかります。一方、制度1において5年間目標を達成しても年間平均の税収増はわずか8000万円です。川崎アプローチ線を含んだ市の支出額三百数十億円は何年間で回収すると見込んでいるのか、伺います。
【答弁】
同制度につきましては、コンビナート全体の操業環境の悪化等が懸念される中、既存産業の設備投資を促し、事業所の高度化・高機能化を図ることで臨海部全体の産業競争力の強化を図るものでございます。
また、南渡田地区につきましては、今後の臨海部の発展を牽引する新たな拠点形成に向けて必要な投資を行うことにより、税収の増加、雇用の創出、市内産業への波及など、様々な効果を見込んでいるところでございます。
今後、川崎臨海部の産業の活性化に向けて、投資促進制度や新産業拠点の形成をはじめ、様々な施策を総合的に推進することで、川崎臨海部への投資効果が最大限に発揮できるよう取組を進めてまいります。