むねた裕之
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予算特別委員会ー臨海部ビジョン「巨額投資は雇用、税収増にならず」

写真(予特)

3月8日、予算審査特別委員会で、私(むねた議員)が質問した臨海部ビジョンについての質疑を紹介します。

あらためて、臨海部への巨額の投資が、市の雇用増、税収増につながっていないことが明らかになりました。

臨海部ビジョンについて

今年度、臨海部の大規模事業の予算は激増しました。港湾局の予算は、一般会計と特別会計合わせて221億円と、前年度の2.1倍。特別会計では6.7倍にもなっています。特に、羽田連絡道路に48.8億、3月補正予算を含めると81億円。臨港道路東扇島水江町線25億、東扇島堀込部埋立66.5億、コンテナターミナル拡充19.4億など不要不急の大規模事業だけで200億円にものぼります。

これまでにも、川崎市は、雇用や税収を増やすためといって臨海部には巨額の投資をしてきました。90年代以降、川崎縦貫道路の整備に総額6293億円、川崎港コンテナターミナルに400億円、水江町先端産業誘致土地購入に237億円、殿町「国際戦略拠点」整備に70億円、千鳥町再整備に40億円など、30年間で大規模開発に巨額の予算をつぎ込んできました。

(従業員数と法人市民税)

それでは、90年代以降の市の臨海部への投資は、はたして市の雇用増や税収増につながったのでしょうか。直近のデータ、検証したいと思います。

市内製造業の事業所数と従業員数について2004年と2014年の数値を、経済労働局長に伺います。

答弁

国の工業統計調査によりますと、平成16年は事業所数が 1776事業所、従業者数が 55,627人、 平成26年は事業所数が1,251事業所、従業者数が 48,120人となっております。

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・この10年間で製造業の市内事業所数は1776か所から1251か所、29.6%減少し、従業員数は55627人から48120人、13.5%減/事業所数、従業員数とも増えるどころか激減しています/川崎区でも従業員数は、10年間、25000人とほぼ横ばいという状況です。

市の法人市民税と個人市民税について2006年と2016年のそれぞれの額を、財政局長に伺います。

答弁

平成18年度決算の個人市民税額は9722,100万円で、法人市民税額は294800万円でございます。平成28年度決算の個人市民税額は1,2166,100万円で、法人市民税額は2053,600万円でございます。

個人市民税が増加した主な要因につきましては、平成19年度に実施された所得税から個人住民税への税源移譲などの、これまでの税制改正によるもののほか、納税

者数の増加によるものでございます。

法人市民税が減少した主な要因につきましては、法人実効税率の引下げや法人市民税の一部国税化等の税制改正によるものでございます。

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・個人市民税は、この10年間で25%と大幅に伸ばしていますが、法人市民税は、294億円から205億円に激減、3割も減らしています。金額も個人市民税の6分の1にすぎません。特に資本金10億円以上の大企業からの税収は、180億円から105億円、42%減と激減させています。

法人市民税と個人市民税の市税における構成比について、2006年と2016年の比率を、財政局長に伺います。

答弁

平成18年度決算の個人市民税の市税における構成比は36.0%、法人市民税の構成比は10.9%でございます。

平成28年度決算の個人市民税の市税における構成比は39.9%、法人市民税の構成比は6.7%でございます。

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・個人市民税の市税に占める割合は39.9%と増加する一方、法人市民税の割合は10.9%から6.7%と激減。法人からの税収は市税全体の1割にもなりません。個人市民税と法人市民税の比率の差は、25%から33%に広がっています。

法人市民税の構成比について、直近の政令市平均の比率を、財政局長に伺います。

答弁

平成28年度決算の法人市民税の市税に占める構成比の政令指定都市平均は9.9%で、本市は平均よりも低くなっておりますが、この要因といたしましては、全国展開する企業の支店が集積する地方の中心都市と、東京に隣接する首都圏の都市との地理的な環境の違いによるものと考えております。

・本市の法人市民税は、政令市平均の9.9%と比べてもかなり低い。川崎市は「全国でも屈指の工業都市」と言われますが、法人市民税の割合は、全国よりもずっと低いのが実態です。

・このように、90年代以降の臨海部への巨額の投資は、25年以上たった雇用や税収の推移をみても、市の雇用増や税収増にはつながっていないことは明らかです。

(内部留保)

一方、臨海部の巨額の投資を受け、市内大企業は、かつてない利益を上げています。

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・従業員が500人以上いる市内大企業51社の内部留保のグラフ/大企業の内部留保は10年間で43兆円から57兆円と14兆円増加。1社あたり2100億円も増大しています。特に臨海部の鉄鋼、石油、化学関連企業であるJFE、東燃ゼネラル、JXエネルギー(旧日本石油)、日本ゼオン、旭化成などは軒並み内部留保を2倍にしました。

・この内部留保の額は、従業員一人当たり2000万円以上にものぼり、東燃ゼネラルでは従業員一人当たり1億2800万円にも達します。臨海部の巨額の投資は、臨海部大企業の企業活動を大いに支援し、利益の増大に寄与していることは間違いありません。

(臨海部ビジョンについて)臨海部国際戦略本部長に

 臨海部ビジョンでは、現状の課題として製造業の事業所数の減少、従業員数の減少を挙げています。当然、目標として雇用増、税収増を挙げるべきと考えますが、ビジョンの中では、雇用増、税収増の目標がありません。

臨海部ビジョンのなかで、なぜ雇用増、税収増の目標を掲げないのか、伺います。

答弁

臨海部ビジョンは、地球規模の温暖化対策や、これを受けたエネルギーバランスの変化、国内的には生産年齢 人口の減少や重化学工業の国内市場縮小、さらには川崎 臨海部における産業構造の変化、生産設備の老朽化、また、ライフサイエンスや新エネルギーなど、新たな産業 分野の創出といったさまざまな環境変化に対応しながら、 川崎臨海部が我が国の成長を牽引する地域として持続的 に発展し続けられるよう、長期的な視点を持って、 30 年後の将来像とその実現に向けた戦略や取組の方向性を 示すものでございます。 臨海部が、「力強い産業都市づくり」の中心の役割を担 う地域として、「豊かさを実現する産業が躍動」し、「多様な人材や文化が共鳴」するために取り組む戦略をとり まとめてまいりますので、こうした取組を通じて活力ある産業拠点として、雇用や税収の確保にもつながるものと考えております。

・いろいろな環境変化があり、目標は掲げていないという答弁でした。特に重化学工業の縮小など産業構造の変化もあり、今よりも雇用や税収が増えるかどうかわからないというのが実態ではないでしょうか。

・課題に「コンビナート全体の設備の老朽化」をあげ、直近10年以内に取り組むリーディングプロジェクトとして、南渡田周辺地区の新産業拠点の形成、新たな物流拠点の形成、コンテナターミナルの機能強化、新たな基幹的交通軸として川崎アプローチ線、住環境の整備などを挙げていますが、

設備の老朽化の解消や、これらリーディングプロジェクトにかかる投資総額は、どのくらいになりますか、伺います。

答弁

川崎臨海部には民間が所有する施設や設備が多く所在 しているところでございまして、これらについて競争力 の強化や老朽化への対応、新たな生産機能への対応に伴 う設備投資などについては、民間企業の判断によるもの でございます。 臨海部ビジョンにとりまとめるりーディングプロジェクトにつきましては、「行政を中心に取り組むこと」、 「企業・行政の協働により取り組むこと」、「企業を中心 に取り組むこと」として整理をしているところでござい まして、このうち、資産活用・投資促進プロジェクトに つきましては、企業、行政の協働により取り組むことと しておりますので、臨海部の競争力強化に資する資産活 用・投資促進の実現に向けて、官民の適切な役胃1^担の 中で取り組んでまいりたいと吉えております。 また、リーディングプロジェクトの推進にあたりまし ては、ビジョン推進にかかる様々な主体がそれぞれの役 割を果たす中で、本市として必要な役割を果たしてまい りたいと考えております。

・答弁では、まだ、いくらかかるかわからないということですが、アプローチ線など巨額の投資をすることには間違いありません。

「石油産業を中心に業界再編と生産機能の最適化の動き」とありますが、具体的にはどのような動きですか、伺います。

答弁

国内の石油産業につきましては、国際競争に対応する ため再編が進んでおり、近年では、産業競争力強化法、 エネルギー供給構造高度化法の施行などを受け、大手石 油会社の経営統合や事業の共同化に向けた合意がなされ るなど、製油所や石油化学製品等の生産能力の最適化、 競争力強化に向けた動きが活発になっていると認識して おります。 臨海部ビジョンに掲げる取組の具体化にあたりまして は、こうした社会経済環境の変化や立地企業の動向等を 適切に捉えながら推進してまいりたいと考えております。

・「製油所や石油化学製品等の生産能力の最適化」との答弁でした。2017年にはJXエネルギーと東燃ゼネラルが統合して、横浜の根岸と川崎のどちらかに統合される可能性もあると聞いて/企業が出ていかないようにと投資しても、企業は経営判断で出ていくことも考えられるわけです/投資が無駄になる危険性も高い!

・しかも、どれだけの雇用増、税収増かも見込めないのに市民の税金を使って巨額の投資をするのは、無謀ではないですか。

私からの提案

市民にとって不要不急の大規模投資については、ビジョンから削除するなど見直しを要望します。

設備の老朽化、拠点の機能強化、再編整備などのインフラ整備については、その恩恵を受ける大企業にも応分の負担を求めるべきです。例えば、泉佐野市では、関西国際空港連絡橋を利用する際、空港連絡橋利用税という法定外目的税をとって、利用する車に応分の負担を求めています。

・ぜひ、臨海部ビジョンの中で、インフラ整備の企業負担について検討を要望します。